OpenAIが口止めした?
ChatGPTがエラーを吐く謎の人名「デヴィッド・メイヤー」
数日前より、ChatGPTが「David Mayer(デヴィッド・メイヤー)」なる人物について訪ねられると、エラーメッセージを返して以後の質問を受け付けないことが話題になっている。
発端は、掲示板サイトRedditのあるユーザーが、「who is david mayer? 」と質問したところ、「I’m unable to produce a response. 」というメッセージが表示されたと報告したことだった。記事執筆時点でも、同じ質問をすると同じエラーメッセージが返ってくる状態だ。
報告を見た別のRedditユーザーたちは、この現象がどういうことなのかに興味を持ち、ChatGPTに対してDavid Mayerが誰かを訪ねることができないなら、せめてその名前を復唱させてみようと躍起になっている。
これまでのところ「David Mayer」を含むメッセージのスクリーンショットを読み込ませて文字認識させようとしたり、自分のユーザー名をDavid Mayerに変更して名前を呼ばせようとしたりしているようだが、試みはいずれも失敗に終わっている。
GoogleでDavid Mayerについて検索すると、金融財閥として知られるロスチャイルド家の御曹司「David Mayer de Rothchild」についての記事が最上位に表示される。しかし、ChatGPTはDavid de Rothchildや、DavidのみまたはMayerのみで調べた場合には返答をするものの「David Mayer」という姓名を入力すると、かたくなに口を閉ざしてしまい、エラーメッセージしか返さない。
考えられるのは、OpenAIが用意した特定の検索ワードを弾くブラックリストに、意図して、または偶然にDavid Mayerが含まれている可能性だ。もしかしたら、この名前を持つ犯罪者かなにかが、ChatGPTの検索から外されるよう措置を講じられた可能性はあるだろう。
一方、この名前を持つ人物が、自身の名前をインターネット上から削除することに成功したという説もないとは言いきれない。特にEU圏内のように個人情報保護に厳しく取り組んでいる地域では、ChatGPTの学習データから自分の名前を除去するよう求めたという可能性も考えられる。
Redditユーザーのjopeljoona氏は、David Mayerの他にも、やはりChatGPTがエラーになってしまう人名を複数発見し、それぞれなぜエラーを返すのかを考察している。その概要は以下のとおりだ。
・Brian Hood
オーストラリアの市長。以前、ChatGPTが誤ってHood氏が収賄の罪で服役したことがあると回答を出力したため、Hood氏は名誉毀損だとしてOpenAIを訴えた(後に取り下げ)。
・Jonathan Turley
米国の法学者・政治評論家。ChatGPTは2023年にTurley氏が学生に性的暴行を行ったと誤情報を回答した。Turley氏はマスコミでこの問題について議論した。
・Jonathan Zittrain
ハーバード大学の法学教授。自身がXで検閲されていると主張したが事実関係は不明。ChatGPTとの関連も不明。
・David Faber
ジャーナリスト、2023年にCNBCの番組でイーロン・マスク氏にインタビューし、マスク氏とOpenAIを訴える可能性について話した(後に訴えた)。他に、第二次大戦時のホロコースト生存者に同名の人物がいる。
・Guido Scorza
イタリアデータ保護当局理事会のメンバー。GDPRにおける「忘れられる権利」の要求をXに提出した。
・David Mayer
有力な候補は2人。ひとりは上記のロスチャイルド家の人物。もうひとりは歴史家のDavid Mayer氏で、こちらは米当局のテロリストを記したブラックリストに誤って掲載されたため、ChatGPTが誤ってテロリストと回答する可能性が考えられる。
最初の2人は、ChatGPTが個人に関する重大な誤りを主張したことでOpenAIに対して法的措置を行った(行う可能性があった)ため、検閲のような格好でChatGPTの処理から除外されている可能性が考えられる。
また残りの人たちも、何らかの格好で法的または政治的な話題でOpenAIに絡む可能性が考えられる。すでに水面下で何らかの問題があるか、リスクヘッジ的な意味合いでの除外されたのかもしれない。
上記はいずれも推測上の話であることに注意が必要だ。だが、David MayerをたずねるとChatGPTがエラーを吐くことについてはいくつかのメディアも報じていることから、今後OpenAIから何らかの説明が出される可能性もありそうだ。