新興国市場でのローエンド端末の盛り上がりこそがトレンド

生成AIは、スマホ買い替えの「スーパーサイクル」を起こさなかった。調査会社が報告

Image:Below the Sky/Shutterstock.com

ここ最近の生成AIブームは、iPhoneのみならずAndroidユーザーにも「スーパーサイクル」、すなわち大規模な買い替え需要を巻き起こすと思われていた。

が、少なくとも2024年の全世界的な市場トレンドを見る限り、空振りに終わったことが判明した。スマートフォンの販売台数は増加傾向にあるが、それはAIブームによるものではないようだ。

今週、IT市場調査会社IDCは、2024年の世界スマートフォン出荷台数予測を発表した。全体的には過去2年間にわたる急激な落ち込みを経て、前年比6.2%増の12億4000万台が見込まれるという。

ただしiPhoneは0.4%しか成長せず、スーパーサイクルはなかった。かたやAndroidは7.4%もの成長を遂げている。

iPhoneはApple Intelligenceの展開が遅れているため、AIブームの恩恵を受けられないのは当然だろう。では、Androidの伸びは生成AIや、折りたたみデバイスが原因なのだろうか。

実はそうではない、とIDCは否定している。まず生成AIについては「多くのベンダーにとってホットな話題であり最優先事項であり続けているが、需要に大きな影響を与えたり、早期の買い替えを促進するには至っていない」とのことだ。

折りたたみデバイスについても同じく、IDCは「販売台数が少ないにもかかわらず、大きく取り上げられ続けている」と指摘している。そして第3四半期には「世界の大手ベンダーのほとんどが新モデルを発売したにもかかわらず、折りたたみの出荷台数は7.4%減少した」という。

ちなみに、折りたたみ市場の不調は、リサーチ会社Counterpoint Researchも指摘している。サムスンが新型モデルGalaxy Z Fold6とGalaxy Z Flip6を発売したにもかかわらず、だ。

では、2024年にスマートフォン市場を成長させた原動力は何だったのか? IDCの答えは「ローエンド端末」である。APeJC(日本と中国を除くアジア太平洋地域)、ラテンアメリカ、中東・アフリカ、中国において、主にローエンド端末を中心とした前年比7.6%ものAndroidの急成長が、極めて重要な要因となっているとのことだ。

2025年に、このトレンドが変わる可能性はあるのだろうか。IDCによれば、今後の数年はAIと折りたたみがハイエンドの成長につながると予想しつつ、当面はAIによるスーパーサイクルの兆しはないと見られている。

そもそもスーパーサイクルを起こすには、AIが誰もが待ち望む「必需品」となる必要があり、メーカー側のさらなる投資が必要だという。生成AIスマホは2028年までに市場の70%を占めるにいたるが、それに伴い「価格帯が下がり続ける」とされている。要は、AI対応がハイエンドに限られず、ローエンド近くまで降りてきて、ようやく買い替えブームが起きるのだろう。

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