背中側でなく腹側に装着
【動画】ウィングスーツにF1風の追加ウィングを装着、3つのベースジャンプ世界記録を更新
オーストリアの空中スタントマン、ペーター・ザルツマン氏が、ウィングスーツを使ったベースジャンプの世界記録を、一度に3つも樹立した。
ベースジャンプとは、高層建造物や断崖絶壁など、非常に高い場所からパラシュートやグライダーなどを用いて飛び降り、滑空するエクストリームスポーツ。ザルツマン氏はウィングスーツと呼ばれる、ムササビの飛膜のような滑空用ウェアを使ったベースジャンプを得意としており、今回の世界記録挑戦に向けて、特殊なウィングスーツを開発して臨んだ。
ザルツマン氏は、ウィングスーツのエキスパートであるアンドレアス・ポドリプニック氏、BMWのイノベーション・スタジオであるDesign Works、さらにレッドブルF1チームの技術開発部門である Red Bull Advanced Technologiesの協力を得て、胴体にハイドロフォイル(水中翼)のような追加のウィングを装着するアイデアを形にした。
フォイル付きウィングスーツの開発では、翼の角度と寸法を正確に調整するのに多くの時間がかけられた。特にF1のエアロダイナミクスの専門家が揃っているRed Bull Advanced Technologiesの協力を得てからは、その技術や知見をもとにフォイルの形状、サイズ、ジオメトリー、その他のパラメーターを最適化した。
最終的にこのフォイルパーツは真空成形装置を用いた発泡コアサンドイッチ構造、幅2.1mの翼として構築された。これをウィングスーツと組み合わせることにより、揚力の発生と滑空性能の向上、飛行距離および滞空時間を延長する効果を生み出すことが可能になった。
10月24日、ザルツマン氏はフォイル付きウィングスーツを身に纏い、スイス3大峰のひとつであるユングフラウの山頂から約300フィート下、標高4063m地点にある岩棚から歴史的な跳躍に挑んだ。
空中に身を委ねたザルツマン氏はすぐに最高速度200km/hに達し、そのまま滑空態勢を維持。パラシュート展開までに5分56秒のあいだ飛行を続け、12.5km離れた、緑豊かなラウターブルンネンの村に着地した。ジャンプ地点と着地点の標高差は3402mに至った。
なお、これまでのベースジャンプにおける最高滑空時間は2011年に米国のディーン・ポッター氏がアイガーから飛び立って記録した3分20秒、飛行距離も同ジャンプで記録しされた7.5kmだった。最大高度差は、レッドブルのウェブサイトによれば、2016年に記録された3240mだった。これら3つの記録をザルツマン氏は塗り替えたということだ。
ベースジャンプの映像は常にエキサイティングで、人々を魅了するものだ。ただ、エクストリームスポーツのなかでも最も危険なのがベースジャンプとされており、毎年30人前後のベースジャンパーが、何らかの事故により死亡している。上で紹介したディーン・ポッター氏も、2015年に事故死した。
今後も、ザルツマン氏のように独自の要素を加えたウィングスーツを開発してベースジャンプの記録を更新しようとする挑戦者は現れるだろう。記録を伸ばすのと同時に、安全にも十分以上の配慮を忘れずにチャレンジして欲しいところだ。
- Source: Red Bull