入手しやすいOTC補聴器をより使いやすく

米連邦通信委員会、全スマートフォンに補聴器のサポートを義務付けへ

Image:Apple

米連邦通信委員会(FCC)は、米国内で販売されるすべてのスマートフォンに対して、Bluetoothと音量コントロールの要件を補聴器および人工内耳デバイスに対応させることを義務付ける新規則を発表した。

改訂された規則では、デバイスのパッケージに示されるラベルの内容は変わらないものの、Bluetoothとテレコイル(電話やループシステムからの電磁信号を受信する補聴器の部品)の要件、および音量制限コントロールに関する情報が追加される。FCCのジェシカ・ローゼンウォーセル委員長は声明で「聴覚障害は重大な問題です」と述べ、4800万人以上の米国人が何らかの聴覚障害を抱えており、特に高齢者や退役軍人に多く見られると指摘した。

米国では2022年に、補聴器を購入する前の相談医による診察が不要なOTC(over the counter)補聴器が販売可能になった。なお、アップルのAirPods Pro(第2世代)も、補聴器としての機能に関してFDAの認可をすでに取得している。

OTC補聴器は価格が一般的な補聴器に比べ5~10万円程度に収まり、通信販売や量販店で販売できるため、20万円以上するのが当たり前な旧来の補聴器に比べ入手しやすくなっている。

新しい規則の下では、スマートフォンメーカーがBluetoothによる補聴器とのペアリングを妨げる可能性のある独自仕様を実装しないよう、共通のルールが定められている。これにより、補聴器の利用者は携帯電話と補聴器の対応をひとつひとつ確認する必要がなくなり、好みに応じて自由に選択できるようになる。

また、すべての補聴器は、スマートフォン側で歪みなく音量を上げられることなど、特定の「使用者に明瞭な音声を保証する音量コントロールベンチマーク」を満たさなければならない。これは補聴器と人工内耳の両方に適用される。さらにメーカーは、補聴器や人工内耳との互換性、ユニバーサルBluetoothペアリング、音量調節のベンチマーク(オーディオの音量をどこまで上げられるかを含む)など、すべてのルールを満たしているかどうかを明確にするために、デバイスに互換性があることを示すラベルを表示する必要がある。

なお、日本では「補聴器」は管理医療機器の分類となっており、医薬品医療機器等法による承認を得る必要がある。一方で現在「OTC補聴器」と呼ばれる、医師による診察や調整サポートなどがない、売り切りの補聴器は、実は以前から規制なく(集音器とは別に)通信販売やドラッグストアなどで販売されていた。ただ、今回の新しいFCC規則が出たことで、今後はスマートフォンと接続できる補聴器の使い勝手がさらに良くなることが考えられ、また安価になっていくことも考えられる。

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