「何人も不要になったサービスへの支払いを強いられるべきではない」

米連邦取引委員会、サブスク退会を簡単にする「Click to Cancel」規則を採択

Image:Daysy Daisy/Shutterstock.com

米連邦取引委員会(FTC)は、10月15日、サブスクリプションサービスにおいて、ユーザーがそのサービスに登録するのと同じくらい簡単に退会処理も行えるようにしなければならないと定める「Click to Cancel」ルールを採択した。採択された規則は通常、約6か月を経たのちに発効する。

FTCによると、インターネットやその他のサービスにおいて、消費者に解約の仕方を提示していなかったり、解約手続きを酷く煩雑にしたり、そもそも加入したことすら気づかせないようなサブスクリプション料金に関する苦情が1日あたり約70件も寄せられているという。

苦情のなかには、解約手続きのために書類を書留郵便するよう求めたり、長い待ち時間がかかるカスタマーサービスへの電話が必要だったりするケース、さらには強引に引き留めようとする担当者との対面でしか手続きを受け付けないケースもあるとのことだ。

FTCの新たな規則では、こうした月額サービスを提供する小売業者やジムなどの健康サービス、その他企業に対し、退会処理を入会するときと同じぐらい簡単にし、定期購読のプロセスをより透明化することが義務付けられる。より具体的には、オンラインでのサブスクリプションを終了する場合は、サインアップと同じ数のクリックにとどめる必要があり、対面での入会手続きにはオンラインまたは電話でそれをキャンセルする選択肢も用意される必要があるとしている。

ただし今回の規則には、提案時に記されていた「企業側が利用者に対して定期的に定額料金を通知する」という要件は含まれていない。

こうした規則が提案され採択されるに至った理由のひとつは、FTCが2023年に米Amazonに対して起こした訴訟だ。この訴訟では米Amazonが利用者に対し、気づかないうちに月額サービスであるAmazon Primeの会員になるように仕向け、さらに退会手続きへのリンクを意図的に見つけにくくするなどの「ユーザーを騙して本来なら行わないような決断をさせる操作的なデザイン要素」、いわゆるダークパターンを駆使して「同意なくサブスクリプション契約に誘導し、ユーザーを苛立たせただけでなく、多額の損害を与えた」とFTCは主張していた。

FTCのリナ・カーン委員長は、今回の規則について「企業は、定期購読を解約するためだけに、人々に果てしない手続きを踏ませることが多すぎる」とし「何人も、不要になったサービスへの支払いを強いられるべきではない」と述べ、企業が利用者に「騙された、またはサブスクリプションに閉じ込められた」と感じさせないよう、利用者がサインアップする前に正確な条件をより明確に伝えるよう指示すると述べた。

この規則のガイダンスの中でFTCは、キャンセル方法が法律に準拠していることを保証するために、企業側に「3つのガードレール」を念頭に置くよう推奨した。まず第一に、登録時に必要でなかった場合、キャンセルするために担当者またはチャットボットと会話することを顧客に要求してはならない。第二に、電話によるキャンセル手続きに対し料金を請求してはならず、手続きは通常の営業時間内に提供されなければならない。そして第三は、対面でのサービスのキャンセルは常に任意でなければならない(顧客の意志に従うこと)。

バイデン政権は以前より、退会処理手続きの方法を明確に示さない、悪質とも言われかねないサービスに対するキャンペーンとして「Clock to Cancel」の取り組みを推進してきた。カマラ・ハリス副大統領も、大統領候補としてこのキャンペーンを経済政策の中に取り込んでいる。

一方、全米商工会議所(USCC)は水曜日、「(FTCが)ビジネスの決定を細かく管理するための権力を掌握した」と述べ、業界団体やFTC内の共和党委員らも、選挙前の忙しさに乗じて新たな煩わしい要件を可決するのは法的権限の逸脱だと反対の意向を示している。

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