【連載】佐野正弘のITインサイト 第130回

シャオミのスマホ出荷台数シェアが日本でも3位に。鍵を握るローエンドスマホの動向

先日10月11日に国内向けの新製品発表イベントを実施した中国のシャオミ(Xiaomi)。新たに発表がなされたのは、ライカカメラのブランドを冠したハイエンドのスマートフォン新機種「Xiaomi 14T」「Xiaomi 14T Pro」や、100インチの4Kチューナーレススマートテレビ「Xiaomi TV Max 100 2025」など、いずれもシャオミらしい性能の高さと低価格を両立したコストパフォーマンスの高さが大きな特徴となっている。

シャオミは2024年10月11日に新製品発表イベントを実施。新しいスマートフォン「Xiaomi 14T」シリーズをはじめとした多くの新製品を発表している

だがそうした同社の発表の中で、製品以外で注目されたのがスマートフォンの出荷台数シェアである。シャオミは世界的にもスマートフォンの大手として知られており、16四半期連続で世界3位のシェアを獲得しているという。

国内のスマートフォン出荷台数シェア3位を獲得

だがそれに加えて今回の発表会では、シャオミが2024年第2四半期における国内のスマートフォン出荷台数シェアでも、米アップル、米Googleに次ぐ3位の座を獲得したことを明らかにしている。これは、シンガポールに拠点を置くCanalysという調査会社が、2024年8月に調査したデータが基になっているようだ。

シャオミは発表の中で、Canalysが実施した2024年第2四半期の国内スマートフォン出荷台数シェアで3位になったことを明らかにしている

ただ、調査会社によって調査の仕方が異なるため、調査方法によってはシェアの順位に違いが生じてくる。例えば米国の調査会社であるIDCが公表している、2024年第2四半期の国内スマートフォン出荷台数シェアを見ると、上位5位は上からアップル、シャープ、Google、シャオミ、韓国サムスン電子の順となっている。

ただこちらの調査においても、シャオミのシェアは前年同期の1%から、7%へと大きく伸びており464%の成長率を記録している。順位はともかく、シャオミの出荷台数シェアが国内で急拡大していることは確かだといえる。

ただ、シャオミが日本市場に参入したのは2019年末とかなりの後発であるし、最近まで市場でそこまで大きな存在感を示す様子は見られなかった。にもかかわらず、今年に入って急成長を遂げている要因はどこにあるのだろうか。

そこに大きく影響したのは急速に進んだ円安で、国内のスマートフォン市場にある大きな変化が起きたこと。より具体的に言えば、低価格のローエンドスマートフォンの領域で市場に大きな穴が開いたことだ。

ローエンドのスマートフォンは価格が安い分、販売数も多いことから、出荷台数のシェア向上に結びつきやすい。だが一方で利益率が低いことから、ここ最近急速に進んだ円安のように、大きな環境変化が起きるとたちまち利益を出せなくなる。

それゆえ円安の進行以降、メーカー側がローエンドのスマートフォンを出さない、あるいは出せなくなる事例が目立っており、その象徴的な事例となったのが旧FCNTだ。FCNTは「arrows We」などのローエンドモデルの販売が好調でシェアを伸ばしていたのだが、急激な円安などによって、そのローエンドモデルで利益が出せなくなり、2023年に経営破綻してしまった。

そしてもう1つ、動きを見せているのがサムスン電子だ。同社もここ数年来、国内向けにローエンドスマートフォンを積極投入してシェア拡大を図っていたのだが、実は円安の進行が本格化した2022年の「Galaxy A23 5G」以降、ローエンドの新機種を投入していない。

サムスン電子のローエンドモデルは2022年発売の「Galaxy A23 5G」以降、投入がなされていない

一方でサムスン電子は2023年以降、投入する製品をハイエンド寄りのものに絞り込み、オンラインショップを開設して高額ながらもファンの要望に応える製品を積極投入するようになった。円安を機としてローエンドで数を追う戦略を改め、高額なモデルに重点を置き、利益を出すことに重点を置く戦略へと大きく舵を切った様子を見て取ることができるだろう。

こうしてローエンドに力を入れるメーカーが減少する中、その穴を埋めたのがシャオミである。世界シェア大手のシャオミは元々低価格帯に強みを持ち、2023年にはローエンドモデルの「Redmi 12 5G」を国内に向けて投入。2023年12月にはKDDI、2024年4月にはソフトバンクと、携帯大手から相次いで販売がなされたことでローエンドの需要を補ったわけだ。

先にも触れたが、ローエンドモデルは価格が安い分販売台数も多いことからシェア向上につながりやすい。ローエンドの需要を満たす端末を、適切なタイミングで投入できたことが、シェア拡大の大きな要因となったのではないだろうか。

シャオミが2023年に発売したローエンドモデルは、KDDIの「au」「UQ mobile」に加え、2024年にはソフトバンクからも販売を開始。これがシェア向上に大きく貢献したと見られる

だが現在の市場環境を見るに、シャオミが国内3位のシェアを維持し続けるのは容易ではなさそうだ。なぜならシャープがローエンドの新機種「AQUOS wish4」を7月に投入しているし、中国レノボ・グループ傘下となって復活した新しいFCNTも、「arrows We2」を投入するなど再びローエンド端末の強化に動いているからだ。

「AQUOS wish4」を投入したシャープに加え、レノボ・グループ傘下となった新生FCNTもローエンドの新機種「arrows We2」を2024年8月に投入。ローエンドスマートフォンの競争は再び加速傾向にある

それだけにシャオミが、国内で安定して高いシェアを獲得し続けるには、やはりローエンドだけでなくミドルクラス以上のスマートフォン販売拡大が欠かせないだろう。そのためには魅力ある製品の投入に加え、ブランド認知の向上が欠かせない。

そこで注目されるのは、海外で展開しているシャオミブランドのショップ展開である。シャオミは現在東京・渋谷で展開している「Xiaomi POP-UP Store」の期間を、当初9月1日で終了する予定としていたが、それを9月30日、そして11月4日へと延長を重ねて展開している。この動きが自社ショップの早期展開へとつながるものになるかどうかが、大いに関心を呼ぶところではないだろうか。

関連キーワード: