もう二度とやりたくないとのこと

16歳の少年、人類初のNES版テトリス“2週目”突入。理論的にはエンドレスプレイ可能を実証

Image:dogplayingtetris/Instagram

今年初め、13歳の少年「Blue Scuti」(プレイヤー名)氏が1511ライン、157レベルを達成した後にゲームをクラッシュさせ、NES(海外版ファミコン)版『TETRIS』を倒した世界初の人物となった。ここでいう「倒す(beat)」とはゲームのスコアやレベルがプログラムの想定を超える域に達し、エラーを起こしてクラッシュや停止させるという意味だ。

それに続き先週末、16歳の少年「dogplayingtetris」ことMichael Artiag氏がレベル255を達成し、ゲーム初期状態のレベル0まで巻き戻す偉業を成し遂げた。

Twitchの視聴者数百人の前で、Artiag氏は80分強かけて3300以上のラインをクリアし、ついに史上初の「復活」をライブで達成した(動画では1:21:24)。プログラム的にカウントできるレベルは255までであり、それを超えた結果オーバーフローが起こり、レベル0に戻ったと思われる。

その後も巻き戻したゲームを約40分続け、最終的には合計4216ライン、2940万ポイントという記録を叩き出している。

もっとも、今回の記録には少し但し書きが付いている。Blue Scuti氏が続行不能となったのはゲームがフリーズしたためだが、Artiag氏がプレイしたのはバグを修正したバージョンだ。その方法についても、ファミコン本体もROMカートリッジも無改造で「再プログラム」する方法が編み出されていた

それでも、NES版テトリス初のレベル巻き戻しは歴史的な偉業でもあり、人類がおのれの肉体だけでどれほどの進化の高みに登れるかを証明したという点で、少しも輝きを損ねるものではない。

NES版テトリスは、日本のファミコン版を含めて、他の移植版よりも非常に難しいことで知られている。それはレベル29以降は目で追うのが不可能と思えるほどのスピードでテトリミノ(ブロック)が落ちることに加えて、左右キーのタメ移動(押しっぱなし)では横に数マスしか動かせず、絶対に追いつかないためだ。

が、ここ数年は十字キーを連打することでタメ移動よりも早く動ける「ハイパータッピング」や、十字キーに指を添えて別の指でコントローラーの下をたたく「ローリング」というテクニックが開発され、理論的にはプレイを無限に続けることが可能になった。ちなみにキー入力の最大値は1秒間に30回であり、高橋名人の16連射を超えている。

レベル29の壁は突破されたが、その後もレベル138ではメモリーオーバーフローエラーによりテトリミノの色がおかしくなり、レベル146や148ではほとんど識別できないような色になってしまう。さらにレベル155以降は、非効率なスコア計算アルゴリズムにより、ラインクリアごとにゲームがクラッシュする可能性をはらんでいる。

修正版ゲームを使っているとはいえ、Artiag氏はレベル235で大きな障害に直面している。レベルのカウントが810ラインもの間ストップしてしまい、さらにテトリミノのカラーパレットが黒い背景に対して見えにくい薄緑である。この難関を突破した後、本人は「ああ、なんてことだ、光が見えた」と叫んでいる

2019年からテトリス競技に参加したArtiag氏は、クラシックテトリス世界選手権で2度優勝し、複数の世界記録も樹立している。それだけの実績を持ちながら、配信中に「これはテトリスで僕が今までやってきた中で最高の瞬間だ」と感慨を述べている。

プレイを終えた後、疲れ切って「ゲームが終わって嬉しいよ」「もう二度とこのゲームはやりたくないよ。正気を失いそうだった」との言葉は、多くの視聴者達の共感を呼んでいた。

NES版テトリスの巻き戻しが人間にも可能だと証明された以上、今後は1回のプレイで中断せずに2回の巻き戻しが達成できるか、という点に注目が集まるだろう。本作は決して出来の良いゲームとは言えないが、制覇すべき山が高くて険しいほど、挑戦者達の心は燃え上がるのかもしれない。

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