低周波騒音は健康被害を引き起こしやすいと言われます

ビットコイン採掘業者の騒音で健康被害、テキサス州で住民が集団訴訟

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長年、暗号通貨の採掘(マイニング)業者に対しては、莫大な電力を消費するにもかかわらず社会への貢献が極端に少ないとの批判がある。

米テキサス州グランベリーでは、そればかりかマイニング業者施設から四六時中聞こえてくる騒音が、近隣住民に深刻な健康問題を引き起こしているという。この過度な低周波騒音は、すでにストレスや睡眠不足、めまい、難聴、偏頭痛、疲労、不安、耳鳴りなどの原因不明の健康被害を周辺住民に引き起こしているそうだ。

そして先週金曜日(10月4日)、20人以上の住民はこのマイニング業者Marathon Digital(MD)に対し平穏な生活を取り戻すべく集団訴訟を起こした。原告らはCitizens Concerned About Wolf Hollowという名の住民グループを組織し、MDに対して電力を暗号通貨に変えるためのCPUやGPUの使用をやめるよう求め、騒音公害を軽減できない場合は施設の永久差止命令を出すよう裁判所に求めている。

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問題となっているMDのマイニング施設では、2万台のコンピューターユニットが稼働し、約300メガワットの電力を消費するため、ガス火力発電所を併設している。これによって大量の電力を安定的に供給してマイニングができるようになっており、将来的な発電能力拡大も計画されている。

しかしこの拡張が行われれば、年間76万トンものCO2が追加排出されることが住民らによって指摘されている。住民らはさらに、このマイニング施設が特に夜間に過度の騒音を発生させているとし、拡張計画に反対している。

これに対しMDは、施設内のコンピューターの30%を音の静かな液浸冷却方式に切り替え済みであり、さらに年内には半数に拡張する予定だとしている。MDの広報担当者は電子メールで、「私たちの業務から発生する音は、さまざまな音源から毎日発生している騒音としては通常の範囲内だ」と述べ「当社の操業が健康上の問題を引き起こしていると結論づける科学的根拠は認められない」と述べた。

テキサス州には、税金の安さ、利用可能な土地の豊富さ、最小限の規制といった条件が揃っており、数多くの暗号通貨マイニング事業者が集まっている。最近の生成AIの台頭の影にかくれつつあるが、仮想通貨マイニングは十分な設備規模とエネルギー供給さえあれば、いまだ利益をあげることができるという。

ちなみに暗号通貨は、中央集権的なサーバーや管理組織を持たないため、その取り引きにかかる計算処理は、インターネットに接続されたコンピューターの計算能力を間借りする格好で行われている。そして、その計算処理でブロックチェーンのブロック生成を成功させたマイナーには、報酬としてビットコインが振り出される。2024年現在、マイニングの成功報酬は1回あたり3.125BTCであり、直近のビットコイン単価が1BTCあたり930万円ぐらいだとすると、約2900万円が手に入るというわけだ。

今年9月には、規模の小さな個人マイナーがブロック生成に成功して、この報酬を手に入れたことが伝えられていた。ただ一般的には、大量のコンピューターを導入して大規模にマイニングを行う事業者がその報酬の多くを手に入れている。

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