米国でナレーターや声優を募集するとのこと。

Audible、オーディオブック読み上げに声優・ナレーターの「音声クローン」を採用

Image:Sensay / Shutterstock.com

米Amazonのオーディオブック事業であるAudibleは、オーディオブックの読み上げに使用する音声AIを強化学習させるため、米国のオーディオブックナレーターのグループに協力を依頼すると発表した。AIの強化に協力した声優・ナレーターには、「タイトルごとに」ロイヤルティ支払いが行われるとのことだが、期待される収入額がどの程度かは不明だ。

すでに、Audibleでは今年5月時点でも4万冊をAIナレーションで製作しており、Google PlayやApple Booksにも、やはりAI生成の音声を活用したオーディオブックがあるようだ。また、Kindle向けに電子書籍を自作公開するクリエイターには、合成音声によるオーディオブックの作成ツールも配布している。このようなツールは、AIや合成音声のオーディオブックを低コストで作れるため、クリエイターにとってはありがたいものと言えるだろう。

しかし、ナレーターや声優を生業としている人々は、この流れに危機感を覚えるはずだ。2023年には、X(Twitter)ユーザーでナレーターのRamon de Ocampo氏が、フォロワーに対し、Audibleに合成音声で作られたオーディオブックを表示除外できるフィルターの追加を要求するよう呼びかけていた。

今回の発表でAudibleは、AIの強化プログラムに参加するナレーター・声優は、自身の声で強化したAI音声で作成されたオーディオブックそれぞれの売り上げに関して、ロイヤルティを受け取るとしている。自分の声を習得したAIがオーディオブック制作に使われ、そのオーディオブックが数多く聴かれれば、声を提供した人には報酬が支払われるとのことだ。

ただ、声を提供する人が増え、AIの声の数が十分に多くなれば、新規でAI音声を鍛える必要はなくなるかもしれない。そうなれば結局、この仕事ナレーターや声優はこの仕事で食べていくことはできなくなりそうに思える。その点については、Audibleは、「オーディオ化されていない書籍は膨大にある」とし「Audibleでより多くの書籍を配信する方法を模索する中で、著者、ナレーター、出版社、リスナーの利益を慎重にバランスさせることに注力している」と述べている。

ちなみに、掲示板サイトRedditでは、この話題に対して様々な意見が寄せられている。それはたとえば「AIが読み上げるオーディオブックを聴きたいとは思わない」、「素晴らしいストーリーと優れたナレーターの組み合わせは魔法のようだが、AIで人間的な要素をなくしてしまうと、魔法が台無しになってしまう」といったものだが、一方で「10年や20年後には、本だけでなくさまざまな場面でAIのナレーションを聞くようになり、最終的には気に入るようになる」との意見もある。ただ、全体的には、やはり否定的な意見のほうが多いようだ。

余談だが、AI音声の採用は、ビデオゲームの登場人物の吹き替えでも始まっている。今年7月には全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)に加入している声優らが、AI音声採用の流れに抗議して複数のゲーム開発企業を相手にストライキを行っていた。オーディオブックでも同様の流れになるのかどうかが気になるところだ。

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