東京都の「SusHi Tech Tokyo」も出展
<IFA>スタートアップの熱気があふれた!最先端のアイデアが集まる「IFA NEXT」レポート
9月6日から10日(現地時間)まで、ドイツ・ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA 2024」。会期中、会場であるメッセ・ベルリンの中でも最大級のサイズを誇る「ホール27」を舞台に、世界のスタートアップが集まる先端テクノロジーの祭典「IFA NEXT」を併催する。
今年の会場に集まったスタートアップによる革新的な展示をピックアップしよう。
東京都の「SusHi Tech Tokyo」がIFA NEXTに参加した理由
今年のIFA NEXTには東京都から「SusHi Tech Tokyo(スシテック トウキョウ)」が参加した。名称は「Sustainable High City Tech Tokyo」に由来しており、持続可能な都市を高い技術力で実現し、都市課題の解決に向けた挑戦や東京の多彩な魅力を国内外に発信することが活動の狙いだ。2024年は5月には東京発のスタートアップを集めた大型の国際イベント「SusHi Tech Tokyo 2024」を開催した。
SusHi Tech Tokyoが初めてIFAに出展を決めた経緯を、東京都政策企画局 計画調整部 プロジェクト推進課 主任の矢賀部洋太氏に聞いた。
「今年ベルリンと東京が友好都市提携を結んで30周年を迎えました。東京都のスタートアップによる様々な持続可能な都市の実現に向けた最先端の取り組みを、世界に向けて発信する良い機会になると考えました」(矢賀部氏)
今回のIFA NEXTには、ベンチャー企業と新鋭のスタートアップが7社集まった。ホール27で最も人通りの多いエントランスの近くにSusHi Tech Tokyoのブースが配置されていたことから、各社による展示は常時盛況な様子だった。
なかでも、台東区東上野に本社を構えるシリウスの介護用洗身用具「switle BODY(スイトル ボディ)」がユニークだった。同社は一般的な掃除機の先端に装着して、カーペットの汚れなどを水拭きしながら吸引できる湿式吸引アタッチメント「switle」をヒットさせた家電メーカーだ。
switleにも搭載した “水を噴射しながら吸い取る機構” を応用したswitle BODYは、要介護者をベッドに寝かせたまま、ベッドを濡らしたり、汚すことなく簡単に介護入浴ができるスマートな家電だ。
本体のタンクに水道水と、泡立ちを抑えて身体を洗える専用ソープを入れて、電源投入後にヘッドで身体を拭くだけの簡単操作。筆者も体験してみたが、内蔵するグラフェンヒーターにより水が温かくなるのでとても気持ちが良い。ヘッドが身体に触れた際には濡れる感覚があるのに、水滴をすぐに吸いとってくれる。
シリウスは国内で4月にswitle BODYを発売した。番組常務取締役である亀井隆雅氏によると、間もなくテレビ東京の番組『ガイアの夜明け』で放送されたこともあり、以来多くの引き合いを得たそうだ。
1台の価格は184,800円(税込)だが、介護施設や個人で買い求める方も多いとのこと。今後、本機を介護保険適用の製品にすることを目指しているという。実現すれば福祉用具貸与品として扱えることから、より安価なレンタルモデルによる提供も可能になる。
亀井氏は、高齢者介護にまつわる様々な課題がいま、日本国内だけでなく海外の先進国でも顕在化しつつある中で「IFA NEXTに出展したことでよい感触も得ている」と語った。
オフィスワーカーをサポートする韓国の「Hand Massager」
今年はIFA NEXTのパートナー国が韓国だったこともあり、ホール27には韓国から様々なスタートアップによる先端技術が集結した。
EMS(Electrical Muscle Stimulation:微量の電流により筋肉を刺激してトレーニング効果を生むデバイス)のスペシャリストであるION Internationalは、腹部、臀部、上腕部などを鍛えるEMSデバイスのほか、膝や方の筋肉に低周波の電流刺激を与えてマッサージ効果を生むデバイスを「REAL EMSシリーズ」として商品化してきた。
同社の最新製品は、両手にスティック状のデバイスを握って、手のひらの疲れを取る「Hand Massager」だ。キータイピングのようなオフィスワークによる手の疲れ、ゴルフやスポーツによる疲労や痛みを和らげる効果が期待できる。
同社スタッフによると、1日2回を目安に10分間のマッサージを行うと効果が現れるという。EMSの効果は、人間の手で圧をかけるマッサージではもみほぐせない箇所にもリーチできることも挙げられる。
IFA NEXTの出展をきっかけに、欧州でHand Massagerの展開を実現することが同社の狙いだ。BtoB、BtoCの両方に展開することを想定した製品だが、エンタープライズの顧客向けには1〜50セットの購入時に73ユーロ(約1.1万円/1台)という価格設定を設けている。
同社は過去に、腹部向けのEMSデバイスである「Champion Belt」を、日本国内にMakuakeによるクラウドファンディングを通じて販売した実績がある。「Hand Massagerもオフィスで働く方々などに向けて日本にぜひ紹介したい」と意気込む。日本の取り扱い代理店も募集中だ。
家事もできるヒューマノイドロボットや、フランスの自動チーズ調理器
IFA NEXTには、ヨーロッパの先鋭的なスタートアップも多く出展している。ドイツ南西部の都市であるシュトゥットガルトに拠点を置くロボット系スタートアップのNeura Roboticsはヒューマノイドロボットの「4NE-1」を出展した。
伸長180cmの堂々とした体格のロボットは、2足歩行で移動したり(時速3km/h前後)、人間のように手や腕が動かせる。最大15kgまでの荷物を持ち上げることも可能だ。
同社のスタッフによると「Neuraは4NE-1のハードウェアとベーシックなソフトウェアを提供する。顧客の側で、4NE-1にやらせたいことをプログラムにして、本機にインストールすれば軽作業や家事など様々なことをロボットがサポートしてくれる」という。
当面はエンタープライズ系の顧客と連携して、独自のヒューマノイドロボットの用途を開拓する考えだという。成果が楽しみだ。
フランスからIFA NEXTに参加したFromagio(フロマジオ)は、ハードタイプからソフトタイプまで「あらゆるチーズを自動調理により簡単につくれる」という、コンシューマ向けのスマートチーズ調理器「Fromagio」を8月下旬に発売した。
IFA NEXTのブースでは、本機でつくったチーズの試食も行われていたことから、ブースには常時多くの人だかりができていた。
Fromagioは、専用のモバイルアプリからチーズのレシピを参照したり、ユーザーが好みの味などを設定したオリジナル制作のレシピに基づいてチーズをつくる。1台で最大1kgの量のチーズをつくることができる。量にもよるが、最速2時間あればすぐに食べられるチーズを調理するという。
価格は780ユーロ。インターフェースは日本語にも対応しているので「ぜひ日本のキッチンにも届けたい」と同社の担当者は意気込みを語った。