古いSF映画で聞くような不思議な音

ISSにドッキング中のボーイング宇宙船から「謎の音」がすると報告

Image:NASA

初の有人試験飛行ミッションで国際宇宙ステーションにドッキング中の、ボーイングのCST-100 Starliner宇宙船内のスピーカーから「謎の音」が聞こえると、搭乗員のひとりブッチ・ウィルモア飛行士が報告している。

この報告についてのやり取りはミシガン州の気象予報士ロブ・デイル氏によって傍受され、インターネット上のフォーラムに投稿された(2024-08-31-Sat-0800_trim.mp3 という名で添付ファイルとしてアップロードされている)。それはまるで、潜水艦の中で聞こえる、一定間隔で鳴り響くソナー音のようだ。

この音の発生源がなんなのかはわかっていない。ただ、Ars Technicaは「宇宙飛行士はときどき、宇宙で時々そのような奇妙な現象に遭遇する」と伝えている。

たとえば2003年、中国で初となる有人宇宙飛行が行われたとき、搭乗していた飛行士は地上管制に「ブリキのバケツを木槌で叩くような音」が聞こえると報告した。その原因は、のちに外壁と内壁の圧力差によって生じる、わずかな宇宙船の変形が原因だと説明された。

今回のStarliner宇宙船からの音も、おそらくは大事に至る類いのものではないと考えられている。また「謎の音」を報告したウィルモア飛行士も、この音について特に問題視しているというわけではなく、あくまで冷静に状況を報告している。

紆余曲折を経て初の有人試験飛行を実施し、6月にISSへと到着したボーイングのCST-100 Starliner宇宙船は、ISSへのアプローチの際にも姿勢制御スラスター5基が正常に動作せず、さらにガス漏れなどの問題も発見されたことで、当初予定の約1週間の滞在期間を過ぎても、地上への帰還が繰り返し延期される状態が続いている。

先日には「宇宙船内における不確実性」を払拭できないとして、CST-100 Starliner宇宙船を無人で帰還させ、続くCrew-9ミッションでISSを訪れるCrew Dragon宇宙船に試験飛行ミッションのクルーであるウィルモア飛行士とスニータ・ウィリアムズ飛行士を、乗せて2025年2月に帰還させる決定が下されている。この予定変更に伴い、Crew-9ミッションのクルーは4人から2人に削減された。

ちなみに、試験飛行のクルーであるウィリアムズ飛行士は、女性による連続宇宙滞在日数195日という最長記録保持者であるが、今回の決定で最短でも2025年2月まではISSに滞在する見込みとなったため、連続宇宙滞在記録も更新されることになりそうだ。

なお、米国人による宇宙滞在の最長記録は、フランク・ルビオ飛行士が記録している。これはルビオ飛行士が搭乗していたソユーズ宇宙船に、小さな隕石またはデブリが衝突し、損傷を受けたためだった。ルビオ飛行士は代替の宇宙船がISSに到着し帰還準備が整うまで、371日間もISSに滞在した。さらに、人類最長の宇宙滞在記録は、いまは退役したロシアの宇宙ステーション「ミール」に437日間滞在したヴァレリー・ポリャコフ飛行士が保持している。

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