ドイツ人にもユーモアのセンスがありました

ドイツ軍の軍艦、ダース・ベイダーのテーマを流しながら英テムズ川を航行する

Image:Willrow Hood/Shutterstock.com

ドイツ海軍のブラウンシュヴァイク級コルベットは、沿岸での哨戒任務などを担っており、ステルス性を重視した設計が施されている。

今週、本艦が英ロンドンへの訓練任務でテムズ川を航行中に、完全にステルス性を捨て去って水兵達が甲板に立つと共に、『スター・ウォーズ』の「帝国のマーチ」(別名ダース・ベイダーのテーマ)の録音を流しながらタワーブリッジを通過したことが話題を呼んでいる。

かつて第二次世界大戦中にロンドン市民が旧ドイツ軍による大規模な空襲にさらされ、海軍の侵攻も現実味を帯びていた(実現せず)ことを振り返ると、あたかもダース・ベイダーが宇宙戦艦スター・デストロイヤーを進軍させるような曲を流した選択は大胆だったと言えるだろう。

が、ドイツ海軍の報道官はBBCに対し、この音楽には「深いメッセージ性はない」と明言し、何らかの意味を込めているわけではないと付け加えている。この艦の艦長は「自由に音楽を選ぶことができる」のだという。

このちょっとした出来事は、2つのことを示している。1つは、これがドイツ軍人らのジョークだったとすれば、ドイツ人にはユーモアのセンスがないという固定観念が間違いだったと証明したことだ。少なくともイギリス人には根強いらしく、約2年前にBBCも「なぜ人々はドイツ人を面白くないと思うのか」というタイトルの記事を掲載していた

もう1つは、『スター・ウォーズ』3部作を見て育った人達が、世界各国やその兵器を動かしているということだ。ドイツ海軍がイギリスのテムズ川で、米国生まれの『スター・ウォーズ』の楽曲、しかも悪役のテーマ曲を流すことほど「国境を越えている」光景は他に例がないだろう。またエンターテイメントをともに楽しむ姿勢が、約80年前の英独の確執を洗い流していることも心温まる光景と言えそうだ。