ウェブサイトにはキツい話
Google検索の“AI要約”機能、日本でも開始。一方、コンテンツ提供しないサイトは検索から除外される懸念
Googleは15日、米国でのみ公開していたAIによる検索結果の要約機能「AI Overviews」を、日本を含む6か国で新たに開始すると発表した。今後数週間で検索結果に要約表示が表れるようになる。
AI Overviewsは自然な言葉での検索に対し、回答になるインターネット上のウェブサイトの内容を要約してユーザーに提示する。機械学習したAIが回答を精製するのではなく、ウェブサイトのコンテンツを要約するため、いわゆる「幻覚」が起きにくく、誤った回答が(ゼロではないものの)発生し難いという特徴を持つ。
一方、Bloombergが伝えるところでは、AI Overviewsが情報源とするウェブサイトが、AI要約機能のためのコンテンツ提供を許可しなければ、Google検索の結果にウェブサイトが表示されなくなるという。
Googleは、ウェブサイトのインデックスを作るクローラーと呼ばれるロボットプログラム「Googlebot」を使用してウェブ検索サービスを行っている。Googlebotが効率よく情報を収集できるサイトは、ウェブ検索の結果一覧でより上位に表示されるとされ、これを最適化するSEOと呼ばれる対策がウェブサイトには求められる。
Googleが新たに導入したAI Overviewsも、結局のところ検索に対する回答の情報源となるのはウェブサイトだ。だが、検索に対する回答をAIが要約して表示するため、そこで検索ユーザーが必要な情報が得られたと考えれば、その先のウェブサイトを訪れる可能性は低下してしまうのは容易に想像がつく。ウェブサイト側としては、サイトへの流入が減れば、そこに掲示している広告も閲覧される機会が減ることにつながり、収益にも影響が出てしまう。
だからといって、AI Overviewsのためにクローラーがサイトを参照するのを拒否すれば、短期的な収入が大幅に減少し、長期的な競争力が大きく失われる可能性が高い。さらにGoogleのウェブ検索の上位に自分のサイトが表示されるという権利も失うことになってしまう。つまり、ウェブサイト側としては何をどうしたところで、コンテンツがGoogleに吸われるばかりで、サイトへのトラフィックが減る未来しか見えない状況、ということになる。
IT機器修理業者iFixitのKyle Wiens CEOは、AnthropicのAIチャットボットにコンテンツを使われたくなければ、AnthropicのクローラーであるCloudebotをブロックすればそれを抑えられるし、ビジネスに影響することはほとんどない。しかし、Googlebotをブロックしてしまえば、トラフィックの流入と多くの顧客を失うことになる」とBloombergに述べた。
そしてこのことは新興AI企業に対してGoogleが絶大な優位性を得ていることを示す。Bloombergによると、多くの新興AI企業は、ウェブサイトのコンテンツをトレーニングに使うためにコンテンツ使用料の支払いが求められることが多い。そしてRedditのような大規模で有用なサイトになれば、小さなスタートアップ企業にはとても支払えない額が提示されることになる。
対するGoogleは、トラフィックを生み出すGoogle検索の影響力により、ウェブサイトのコンテンツを自由に収集し、それをAIの強化学習に使うことができる。そのため、わざわざ使用料を支払う必要がない(RedditはGoogleとコンテンツ提供の契約を年間6000万ドルで結んだが、これはかなり例外的)。
広告業界誌AdWeekは3月、GoogleのAI生成による回答の要約機能は、通常の検索によるウェブサイトへのトラフィックを20~60%減らす可能性があると伝えた。
米国の連邦裁判所は先週、Gogoleがスマートフォンやウェブブラウザーでの検索を自社に取り込むため、アップルやサムスンといった企業に年間数十億ドルを支払い、不法にその優位性を強化したとして司法省や複数の州から告訴されていた件に対して、違法な独占だとの判決を下した。そして、ChromeやAndroidなどの部門を分社化する、またはGoogleをデフォルトの検索エンジンとすることを放棄する、Googleに検索データを競合他社と共有させたりことを求めるなどの対応を検討しているとNew York Timesが報じた。
検索は依然として Googleにとって極めて重要であり、独占禁止法に違反するとの判決を受けていくらか状況が変わるかもしれないが、ウェブ検索のAI化は今後も業界の流れとして進んで行くことになるだろう。ニュースサイトTalking Points MemoのJoe Ragazzo氏は、ウェブサイトがGoogleなど特定の技術プラットフォームに過度に依存せず、自らの命運を何かに託さないことの重要性を強調し「私たちの信念は、読者と真の関係を築くことだ」と述べている。