もうISSに2か月以上滞在しています
ボーイングStarliner宇宙船、帰還方法を8月末に決定へ。姿勢制御システムなどに不具合
NASAは、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中のボーイングの新型宇宙船CST-100 Starlinerとその飛行士を8月末に帰還させる決定を延期し、宇宙船の飛行準備態勢について引き続き議論していくと発表した。
6月5日、NASAは度重なる不具合で打ち上げを幾度となく延期していたStarlinerの打ち上げを決行し、この新型宇宙船の初めての有人試験飛行ミッションを開始した。予定では、このミッションは打ち上げの翌日ISSにドッキングし、約1週間滞在した後、地球に帰還することになっていた。そして、このミッションを通じて問題がなければ、Starlinerは次回の打ち上げからは本格運用に入るはずだった。
ところが、全体で8日間で終わるはずだったこのミッションは、ISSへと向かう際に発生したヘリウムガスの漏れや姿勢制御システムの不具合といった技術的な問題への懸念から、いまだStarlinerと2人の飛行士をISSから帰還させることができずにいる。
エンジニアらが引き続き宇宙船の問題点に関するデータを収集し議論を続ける一方、NASAの高官らはISSで立ち往生状態の飛行士2人をStarlinerで帰還させるか、6か月後になるものの、SpaceXの宇宙船に乗せて返すかをいまだ思案している。
NASAの宇宙事業ミッション本部副管理者であるケネス・バウアーソックス氏は「Starlinerのデータの分析は来週後半には終わり、来週末ごろには帰還のための飛行準備審査を行う準備が整うことを期待している」と述べている。
NASAは2011年のスペースシャトル退役後、宇宙飛行士を地球低軌道に送り込むミッションを民間企業と協力して行う商業飛行プログラムを立ち上げ、その一環としてSpaceXとボーイングに宇宙船の開発・製造を委託した。
しばらくの間はISSへの飛行士の輸送はロシアのソユーズに頼る状況が続いたが、SpaceXがDragon補給船を有人飛行用に仕立てたCrew Dragon宇宙船の運用を開始したことで米国からも飛行士の往復が可能になった。
一方、ボーイングが開発するCST-100 Starlinerは開発の難航によりスケジュールは大きく遅れ、初の有人試験飛行も複数回の延期の末にようやく行われる状況だった。そして、打ち上げ後も、無事にISSにたどり付きこそしたものの、5か所のヘリウム漏れ、5つの姿勢制御スラスターの故障など、多くの不具合が発生した。その結果、6月5日に打ち上げられてからすでに10週間以上が経過したが、いまだStarlinerの帰還のメドは立っていない。
スラスターの不具合については、地上で実施した姿勢制御システム(RCS)のテストの結果、内部のテフロンシールが推進剤の流れを妨げるほどに過熱膨張したのが原因であることがわかった。
エンジニアらは7月27日には、ISSにドッキングした状態のStarlinerでスラスターを稼働させる試験を実施して十分な推進力が得られることを確認したものの、往路で発生したスラスターの問題が大気圏再突入の際に再発しない確証がなく、懸念を払い切れていない。さらにヘリウム漏れに関しても、宇宙船が軌道を維持するためのシステム(OMAC)のスラスターの一部を壊してしまう可能性があり、問題が宇宙飛行士にどの程度の追加リスクをもたらすかを数値化できなかったとしている。
NASAは、応急対応策として、ISSに足止めされている飛行士2人をSpaceXのCrew Dragonで帰還させる案を検討している。これは早ければ9月24日に打ち上げられるCrew 9ミッション用のCrew DragonでStarlinerの飛行士を帰還させるというものだ。定期ミッションのクルーは通常4人だが、これを2人に減らして打ち上げることで、2025年2月に予定する帰還時のStarlinerの飛行士の席を確保できる。
NASAの宇宙飛行士のひとり、ジョセフ・アカバ氏は「CST-100 Starlinerのミッションはあくまでテスト飛行であり、宇宙船が完璧ではないことはわかっていた」「有人宇宙飛行には本質的にリスクがつきまとうものであり、宇宙飛行士として、われわれはそれを仕事の一部として受け入れている」と述べた。
ちなみにボーイングは、Starliner宇宙船に飛行士を乗せて安全に帰還できる能力に引き続き自信を持っていると述べている。先月に行ったテストでは、故障した5基のRCSスラスターのうち4基がテスト噴射中に回復、28基中27基が正常で冗長性を維持しており、ヘリウムレベルも安定していることから、宇宙船は完全な動作能力を取り戻していることが確認されたとした。そして、宇宙船のISSからの安全な離脱と着陸能力を確認するための追加のテスト、データ、分析、レビューに対するNASAの要求を引き続きサポートするとしている。
- Source: NASA Boeing
- via: Live Science