iPhoneのハイスピード撮影でキックの瞬間までとらえる
英プレミアリーグ、iPhone数十台を用いたオフサイド検出システムを準備中
英国のサッカー・プレミアリーグは、試合中のオフサイドを検出するためのiPhone数十台を用いた新しいシステムを、2024 – 25シーズン後半に導入することを計画している。この新システムは、判定の難しいオフサイドをより正確に判断できるようにするためのものだ。
サッカーのオフサイドはサッカーを知らない人には非常にわかりにくいルールだ。簡単に説明すると「攻撃側のチームは、ボールと守備側チームのゴールとの間に少なくとも2人の守備側選手(ゴールキーパー含む)がいなければ、守備側ピッチ上にいる攻撃側選手にパスを通してはならない」というもので、要は守備側が出払ったゴール前に攻撃側の選手が待ち伏せ、そこへパスを通して簡単に得点するようなプレイを防ぐために定められている。
米国のNBAなどで実績あるGenius Sportsが開発するこの新しいシステムは、少なくとも28台のiPhoneを連携させ、そのカメラを用いて複数の角度から撮影した映像を用いてピッチ上の選手の位置とその身体の輪郭を特定し、オフサイドを検出するのだという。また、撮影のフレームレートは秒間100フレームとし、選手がボールを蹴った瞬間を特定できるようにする。
撮影された映像データは、すでに一般的なサッカーイベントなどで学習しているAIを用いて各選手の動きを取り込むだけでなく、リアルタイムで状況を分析、把握するという。これによって試合の大幅な遅延や人為的エラー、既存技術の限界による試合中のオフサイド判定精度に関する懸念を取り除くことが期待される。
ただし、プレミアリーグはこのシステムについての詳細をまだ明らかにはしておらず、またこのシステムを用いた場合も、判定を下す際の最終決定は人間が行うとしている。
プレミアリーグでは、2019年以来ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)システムと呼ばれる映像による判定システムが導入されており、審判による判定が明白に間違っていた場合にそれを正すことを目的として使用されている。ところが、VAR判定を使うシーンが増えた結果、その映像チェックのために試合中断の時間が長引き、下された判定が不利にはたらいた側のファンにはフラストレーションを生み出すことになった。
また、判定の明白な誤りを正すというVARの本来の目的から逸脱し、審判の判断を過度に分析するために用いられるようになったことで試合の流動性などを損ない、審判員の権威が低下、さらにはVARを使用しているにもかかわらず判定のミスが繰り返し発生した。その結果、プレミアリーグは2024 – 25シーズンにおいて、VARよりもまずはピッチ上の主審の判断を重視する方針を打ち出している。
- Source: Genius Sports
- via: Wired 9to5Mac