広告収入は激減中

マスク氏「戦争だ」。Xが広告を引き揚げた業界団体を提訴

Image:Frederic Legrand – COMEO/Shutterstock.com

実業家のイーロン・マスク氏が保有するX社(旧Twitter)は、一部の企業が歩調を合わせてXへの広告出稿を止めたのが違法だとして、GARM(責任あるメディアのための世界同盟)やWFA(世界広告主連盟)、食品大手ユニリーバなど複数の大手企業を提訴した。マスク氏は「2年間平和を試みたが、今度は戦争だ」と息巻いている。

X社が米連邦地裁で起こした訴訟は、GARMの指針に沿った大手企業を相手取ったものだ。GARMは2019年にWFAにより設立された団体であり、X自らもメンバーとして名前を連ねている

訴状では「米国で最も人気あるSNSの1つにおける、競合する広告主による集団ボイコットに関する反トラスト法違反訴訟だ。GARMを通じて設定されたSNS上の広告に関する特定のブランド安全基準からTwitterが逸脱することを懸念した共謀者たちは、ボイコットを通じてTwitterにこれら基準の遵守を強制するために集団で行動した」と主張している。

X社が求めていることは、1つには「裁判で決定される実際の損害額」を3倍にした損害賠償。もう1つは「クレイトン法第16条に基づき、被告が原告からの広告購入に関して共謀し続けることを禁じる」終局的差止命令である。

この訴訟は、マスク氏が「広告ボイコット騒動の加害者や協力者に対して訴訟を起こすしかない」と述べた数週間後に起こされた。米下院司法委員会が「GARMが業界団体を組織し、消費者から選択肢を奪うような行動をすり合わせていることは反トラスト法違反である可能性が高く、米国の基本的自由を脅かしている」との報告書を発表したことに後押しされたかっこうだ。

さらにXのリンダ・ヤッカリーノCEOは、広告主への公開書簡を掲載。訴状で「違法なボイコット」と呼ぶ行為が「偉大な業界の汚点であり、このまま続けることは許されない」と述べている

マスク氏が広告主の流出を煽ったという業界団体に対して訴訟を起こすのは、今回が初めてではない。

たとえば非営利団体CCDHが、マスク氏が買収して以降のTwitter(当時)でヘイトスピーチが急増しているとのレポートを発表した際も、実際に提訴。またXが反ユダヤ主義的なコンテンツと一緒に広告を表示したと示す報告を公開した監視団体Media Mattersも訴えていた。もっとも、前者は自らを批判した組織を「罰する」試みだとして、裁判所に棄却されている

マスク氏が買収した後、Xは株式を非公開としたため、決算報告も発表していない。最近のNew York Times報道によると、2024年第2四半期における米国での収益は1億1400万ドルで、第1四半期から25%減、前年から53%減だったとのことだ。

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