アップル株を安く手放したことを後悔している?

27年前の今日、マイクロソフトが“倒産寸前のアップル”に1億5000万ドルを支援

Image:bluestork/Shutterstock.com

ちょうど27年前の本日(8月7日)、米マイクロソフトはアップルに1億5000万ドルを投資したことを発表した。この出来事が今や3兆ドル企業となったアップルを救ったのか、なぜマイクロソフトが当時としては巨額を投じたのか、複数の海外メディアが振り返りつつ総合的な評価を述べている。

1990年代半ば、アップルはMacの市場シェア拡大もままならず、やがて10億ドルという巨額の損失を抱え込んだ。早すぎたPDA端末「Newton」も事態を好転させることはなく、かつて先進的だったMac OSのSystem 7も停滞を続け、Windows 95の快進撃を前にして立ちすくむばかりの印象だった。

マイクロソフトとアップルとの提携は、1997年のMacworldでスティーブ・ジョブズ氏により発表された。ジョブズ氏は、この投資がMacのソフトウェア市場全体の成長に役立つと主張。またマイクロソフトの共同創業者ビル・ゲイツ氏も衛星通信で登場し、Microsoft OfficeやInternet Explore(IE)などをMacに供給し続けることを約束していた。

この1億5000万ドルの投資は、議決権のないアップル株の購入に使われた。マイクロソフトの時価総額のほんの一部に過ぎなかったが、なぜ金銭的な命綱を競合他社に差し出すのか、アップルが破産するのを見守る方が賢明ではなかったか、と少なからずの声が上がっていた。

だが今の目で見れば、マイクロソフトが親切心から動いたわけではないことは明らかだろう。Macが売れるたびに、自社のOfficeアプリがユーザーを増やすこと、収入が増えることに繋がる。もしもアップルが倒産していれば、貴重な収入減となるプラットフォームが1つ減っていただろう。

もう1つの理由だが、当時のマイクロソフトは無料のIEをWindowsに同梱して、ウェブブラウザ市場を独占しようとしているとして批判の声が上がっていた。

ほとんどのブラウザは有料だったなかで、不公正な商慣習の域に踏み込んでいるとして、実際にNetscapeや米政府から反トラスト法違反として裁判を起こされていた。もしもWindowsの普及がアップルの衰退を速めているとみなされたなら、規制当局による締め付けがさらに強まった可能性もある。その逆となる資金援助は、イメージの改善に貢献したことだろう。

さらに、マイクロソフトにとって1億5000万ドルはささいな額だったかもしれないが、アップルが立ち直れば大きなリターンをもたらす。実際、2001年に議決権のないアップル株は1810万の普通株に転換され、3倍以上の5億5000万ドルへと現金化された。結局のところ、「マイクロソフトは自分を救っただけ」との見方が有力だ。

もっとも記事執筆時点では、アップルの時価総額は3兆1600億ドルである。最高の知性が集まったマイクロソフトといえども、20年以上も先のことは見通せないようだ。

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