テクニカルサポートのお粗末さも批判

Apple Arcade開発者、支払の遅れに不満。Vision Pro用ゲーム開発にも報奨金なし?

Image:DANIEL CONSTANTE/Shutterstock

アップルの定額ゲームサービス「Apple Arcade」は開始から5年が経ったが、外からは状況が見えにくい。その内情を伝えていたMobileGamerが、Apple Arcadeに参加している開発者から寄せられた匿名コメントをまとめている。

主な不満は、支払いとアップル側担当者とのコミュニケーション不足にまつわるものだ。あるインディーズ開発者は6か月間も支払いがなかったといい、別の開発者は2か月前から請求しているが「無視」されていると述べている。

Apple Arcadeと契約した当初は、ボーナスプール(継続的なロイヤリティ支給)から毎月、迅速に支払いを受けていたとのこと。が、時が経つにつれて支払いは滞り、待たされることが慢性化している。あるスタジオは、そのために廃業寸前まで追い込まれたという。

なぜ支払いが遅れているかは不明だが、ロイヤリティの計算が不透明なままであることも事態を悪化させているようだ。

とはいえ、ポジティブな点もなくはない。複数の開発者が契約をした際に、前渡し金が素晴らしかったことを褒め称えている。それは他社のギャラとはケタ違いであり、その上ロイヤリティまでもらえる。少なくともサービス開始から数年は気前よく支払い、その資金がなければ「今の自分たちは存在しなかった」という人もいるほどだ。

裏を返せば、すべてを帳消しにする支払いが渋くなってきたから、不満の声も高まってきているようだ。

金銭問題ばかりではなく、アップル側とのコミュニケーション不足、あるいは担当者に専門的な知識が欠けていることをぼやく人も多い。

メールへの返事があったとしても3週間は待たされ、質問しても半分は反応がない。また反応があっても、担当者は事態が理解できず、答えることができないという。テクニカルサポートは「惨め」であり、「今まで見てきたどこよりも最悪」との声もある。

もう一つの驚きは、アップルがVision Pro用のゲームを作るよう推奨しているのに(公式にもApple Arcade+Vision Proを宣伝)そのためのインセンティブも一切提供されず、プロモーションもマーケティングも何一つ保証されていないことだ。

またアップル社内のエンジニアも、Vision Proがどのように機能するかを知らないようであり、必要不可欠なミドルウェア(開発アプリ)の仕組みについて何の洞察も得られなかったとの嘆きも紹介されている。

ほとんどの開発者は、Apple Arcadeの全体的な方向性が定まっていないという見方では一致している。「アップルは100%ゲーマーを理解していない」という者もいれば、「当初よりも、はるかにユーザーのことが分かっていると思う」と反論する開発者もいる。いずれにせよ、同社が言語化して知らせることはなく、推測するしかないようではある。

かつてアップルは、新規タイトルの契約に前向きだったようだ。が、ある開発者は「最近のアップルとの契約は非常に難しく、長いプロセスだ」と語っている。現在アップルが求めているのは「ハイコンセプトでアートなインディーゲーム」ではなく、ファミリー向けゲームだとみられている。

実際、最近のApple Arcadeは『Hello Kitty Island Adventure』のような大物IPゲームや、『Vampire Survivors+』や『Temple Run:Legends』といった知名度の高いタイトルから課金要素を抜いたものが増えている。それらが人気を集めている結果として、中小インディー開発者へのケアが薄くなり、ますます不満を高めているのかもしれない。

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