手の出しやすいAir 2かAirで十分かも

XREALの「ARグラス」4モデルを比較した結論。Air/Air 2/Air 2 Pro/Air 2 Ultraどれがおすすめ?

「Meta Quest 2/Quest 3」が人気を集め、「Apple Vision Pro」も発売されたことで、ますます注目を集めているVR/AR業界。これらのHMDは没入感が増すというメリットがある一方で、サイズが大きく、保管に場所を取り持ち運びが面倒というデメリットもある。

そこでおすすめしたいのが、より手軽なARグラスだ。サイズ的には少し大きなサングラス程度で、保管や持ち運びにも苦労しない。いくつかのメーカーから発売されているが、この分野で最も大きなシェアを持っているのがXREALだ。

XREALは、2023年に最新モデルとなる「XREAL Air 2」と「XREAL Air 2 Pro」を発売した。また、開発者向けモデルではあるが、ハンドトラッキングにも対応した「XREAL Air 2 Ultra」もリリース。2024年6月には、従来モデルである「XREAL Air」の値下げも行われている

そこで本記事では、XREAL Air/Air 2/Air 2 Pro、そしてAir 2 Ultraを比較しつつ、どれがおすすめなのかを考えたい。

光学的スペック以外はほぼ同等

まずは、各製品の主なスペックを確認しておこう。

ディスプレイ性能に関しては、XREAL Airが片眼0.68インチ、XREAL Air 2/Air 2 Proは片眼0.55インチ、XREAL Air 2 Ultraは片眼0.68インチとなっている。なお、解像度はすべて片眼1920×1080ピクセルでリフレッシュレートは120Hzだ。ちなみに、XREAL Air 2とAir 2 Proの差異は、後述する電子調光機能の有無だけで、光学系などの基本仕様は同一だ。

▲XREAL Air 2 Proのディスプレイ部

すべてのモデルがmicro OLEDパネルを採用しているが、XREAL Airのみ旧世代。他の3つは新世代となっており、画面の明るさがXREAL Airよりも明るくなっている。

光学系での違いとしては、XREAL Air 2 Ultraのみ視野角が52度でわずかに広い。ただし解像度は同じなので、視野角が広い分だけPPD(Pixel Per Degree)が小さくなっている。

PPDは、視野角1度あたりに表示できるピクセル数のことで、通常のディスプレイで使われるPPI(Pixel Per Inch)に相当するものだ。この数値が大きいほど解像感が高く、小さいほど解像感が荒くなる。PPDが55~60で、視力1.0の見え方に相当すると言われている。

エレクトロクロミック調光機能

ディスプレイ以外では、性能面にあまり大きな差異がないXREAL Air/Air 2/Air 2 Proだが、大きく異なるのがエレクトロクロミック調光機能(電子調光機能)の有無だ。

XREALに限らず、サングラス型のARグラスは、実際のサングラスと同様に回りの景色を見ることができる。そこに映像を重ねているので、周囲(背景)が明るいと当然映像は見えにくくなる。このため、XREAL製品にはサングラス前面に取り付けて遮光するライトシールドが付属しており、これを装着すると周囲は見えなくなってしまうが、映像自体は見やすくなる。

▲ライトシールドをかぶせることで、表示する映像をクリアに見ることができる

これに対して、XREAL Air 2 ProとXREAL Air 2 Ultraには、エレクトロクロミック調光機能が備わっている。サングラスの透過率を電気的に3段階に変化させることで、表示している映像を見やすくする技術だ。

夜間の室内など、周囲が暗い状況であれば透過率を最大(100%)にしても映像は見やすい。当然ながら周囲の状況も確認できる。日中の室内などであれば、透過率を35%、屋外なら0%と状況に応じて3段階に切り替えられる。

なお、透過率を0%にした場合でも完全に遮光されるわけではなく、周囲が明るければ透けて見える。完全に遮光したい場合にはライトシールドの装着も可能だ。

▲XREAL Air 2 Proのエレクトロクロミック調光。左から透過率100%、35%、0%

3D環境センサーを搭載するXREAL Air 2 Ultra

今回の4モデルの中で、XREAL Air 2 Ultraだけは、開発者向けモデルという位置付けになっており、他の3機種にはないいくつかの機能が備わっている。その中で、最たるものがレンズ横に設置された2つの3D環境センサーだ。

▲XREAL Air 2 Ultraには3D環境センサーが搭載されている。RGBカメラではあるが、静止画や動画の撮影はできない

XREAL Air 2 Ultraは、この3D環境センサーを使うことで周囲の空間を認識し、床やテーブルなどの平面を検出したり、手の動きを認識してハンドトラッキングを行ったりすることも可能だ。

とはいえ、こうした機能は開発者向けのものなので、ごく一部のアプリを除き、一般ユーザーがこうした機能を活用する機会はほとんどないだろう。

音質面の違い

XREAL Air 2はディスプレイが新しくなっているが、XREAL Airと見比べてみても表示の違いは感じなかった。ただ、音質面では違いがある。

XREAL Air 2/Air 2 Pro/Air 2 Ultraには第2世代の音響システムが搭載されており、迫力のある音を楽しめる。これと比べるとXREAL Airは、全体的に音が軽い印象だ。ゲームや映画を存分に楽しみたいという場合には、この点も考慮に入れると良いだろう。

▲XREAL Air 2(左)とXREAL Air(右)。Air 2はツル上面側にもスピーカーの開口部がある

結局どれがおすすめか

結局、どのモデルがおすすめなのか。利用ケース別に考えてみよう。

まず自分でAR系アプリやサービスの開発を考えている場合。このような人はXREAL Air 2 Ultra一択だ。先に挙げた3D環境センサーのほかにも、6DoF空間認識、画像追跡などの機能も備えている。

こうした機能があるために価格は高めになっているが、XREAL Air 2 Ultraのみチタンフレームを採用しており、他のモデルよりも質感が高い。見た目にこだわるのであれば、開発者でなくてもXREAL Air 2 Ultraを選ぶのはありだ。

▲XREAL Air 2 Pro(左)とXREAL Air 2 Ultra(右)

ARグラスを自宅外で利用する機会が多い場合には、エレクトロクロミック調光が行えるXREAL Air 2 Pro、あるいはXREAL Air 2 Ultraがおすすめだ。

カフェや移動中の新幹線、飛行機などの中でも、周囲の状況を確認しつつ見やすい透過率を選択できる。ライトシールドで覆ってしまうと周りが見えなくなるため、公共の場では避けたほうがいいだろう。

▲ライトシールドを装着すると周囲が見えなくなるが、自宅で利用する分には問題ない

外に持ち出すことが少なく、主な利用場所は自宅だということであれば、エレクトロクロミック調光がないXREAL Air/Air 2でも問題はない。音質面で妥協できるのであれば、値下げされたXREAL Airもねらい目だ。

なお、筆者は個人的にXREAL Air 2 Proを使用している。当初はエレクトロクロミック調光が便利そうだと思っていたのだが、自宅でのみ、しかも夜に利用することが多いので、実際のところは調光する機会はほぼない。

そのため、今買いなおすならXREAL Air 2にするだろう。Airでもいいのだが、音質の差はかなり気になる。この辺りは試してみないとわからない部分なので、ぜひ量販店などで確認してほしい。

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