【連載】佐野正弘のITインサイト 第118回

AIで進化した「Galaxy Z Fold6/Flip6」比較レビュー! どちらを選ぶべき?

サムスン電子が7月31日に発売することを発表した、折り畳みスマートフォンの新機種「Galaxy Z Fold6」と「Galaxy Z Flip6」。ともに従来機種から一層のブラッシュアップが進められ、ハードウェア面の完成度が高められている。それに加えて両機種は、それぞれの機種がもつ特徴とサムスン電子独自のAI技術「Galaxy AI」を組み合わせ、利活用の幅を広げているのが大きなポイントとなっている。

サムスン電子の折り畳みスマートフォン新機種「Galaxy Z Fold6」(右)と「Galaxy Z Flip6」(左)。ハード面の進化だけでなく、「Galaxy AI」による機能強化が大きくアピールされている

新機種「Z Fold6/Z Flip6」を比較。ハード面の進化ポイントは?

実際のところ、両機種はGalaxy AIによってどのような進化を遂げ、どのような人のニーズに応えるスマートフォンとなっているのだろうか。発売前の実機をお借りできたので、実際に試しながら確認してみた。

まず両機種のハード面の進化について軽く触れておきたいが、今回比較的変わったと感じるのは、横折りタイプのGalaxy Z Fold6の方だ。前機種「Galaxy Z Fold5」は、ベースの性能以外に大きな変化が見られなかったが、Galaxy Z Fold6は閉じた時の厚さが12.1mm、重量が239gと、従来より一層の薄型軽量化が図られている。

それに加えて、閉じた状態での横幅が68.1mmと、Galaxy Z Fold5より1mmほど広くなっている。これらの変更によって改善されたのが、閉じた状態で持った時のホールド感や操作性だ。従来のGalaxy Z Foldシリーズは閉じるとどうしても縦長で厚さが出てしまうため、片手での操作がしづらい感があった。だがGalaxy Z Fold6は、薄さや軽さに加え横幅が、より一般的なスマートフォンに近い幅に広がったことで、片手での操作感はかなり向上した印象だ。

折り畳んだ状態のGalaxy Z Fold6。薄く軽くなり、横幅がやや増したことで、一般的なスマートフォンにより近い感覚で片手操作ができるようになった

一方のGalaxy Z Flip6は、前機種の「Galaxy Z Flip5」で背面のディスプレイが大画面になるなど大きな変更が加えられたことから、外観では大きな違いがないように見える。だがGalaxy Z Flip6は、従来機種での不満点の改善に力が入れられているようだ。

その1つがカメラで、従来1,200万画素だった広角カメラのイメージセンサーが5,000万画素に進化し、より質の高い写真撮影ができるようになった。バッテリーも3,700mAhから4,000mAhに増量され、より長時間の利用に耐えられるようになったほか、本体を開いた時のヒンジ部分にある “しわ” も、従来より薄く目立たなくなっている。

開いた状態のGalaxy Z Flip6。折り目部分の “しわ” は従来より軽減され、違和感も減少している

Galaxy AIを活用した各種機能面もチェック

だがやはり、今回2機種の最大の特徴として打ち出されているのは、Galaxy AIであることは間違いない。Galaxy AIは既に発売されている、もう1つの同社フラグシップモデル「Galaxy S24」シリーズで、既にボイスレコーダーの文字起こしや通話のリアルタイム翻訳、被写体を消したり移動したりするなど写真の編集機能に活用されている。

今回の新機種に関しては、横折り型で画面がタブレット並みに広くなることから “ビジネス利用が多い” Galaxy Z Fold6と、大画面のスマートフォンをコンパクトに折り畳めることから “カジュアルな利用が多い” Galaxy Z Flip6、それぞれの特性に合わせてGalaxy AIを活用しているのがポイントとなっている。

中でも機能の充実度が高いのが、Galaxy Z Fold6である。本機は従来機種と同様、専用の「Sペン」を使ってメモなどができるアプリ「Samsung Notes」がプリインストールされているのだが、このアプリにGalaxy AIを活用した機能が多く追加されているからだ。

実際にSamsung Notesでは、ボイスレコーダーと同様に録音した音声を文字起こしし、それを翻訳して貼り付けるなどの操作も簡単にできるほか、PDFファイルを取り込んで翻訳することも可能。他のアプリを経由する必要なく、文章の要約や翻訳などが簡単にできるのは大きなメリットといえる。

Galaxy Z Fold6の「Samsung Notes」では音声を録音することも可能で、Galaxy AIによってその音声を文字起こしして翻訳し、ノート上に追加することもできる

また新たに追加された「AIスケッチ」を使えば、ノート上に簡単な絵を描くことで、3D風やイラスト風などさまざまなスタイルの絵にしてくれる。絵が得意でない人でも、ノート上に簡単にイラストを追加することが可能だ。

Samsung Notesの「AIスケッチ」機能を使えば、ノート上に描いた絵を複数のスタイルの絵に変換してくれる

他にもビジネスに役立つ機能として挙げられるのが、「通訳」機能である。これはGalaxy S24シリーズにも搭載されているものだが、Galaxy Z Fold6では背面のディスプレイに翻訳した内容を表示できることから、本体を90度折り曲げることで対面にいる相手との会話がしやすくなっている。

「通訳」機能では折り畳み構造を生かし、背面のディスプレイに翻訳結果を表示して対面の相手に直接見せることが可能。相手側から直接マイクボタンを押し、話してもらうこともできる

それに加えて、Galaxy Z Fold6では新たに「リスニングモード」が用意され、外国語による講演やセミナーの内容をリアルタイムで翻訳できるようになった。実際に使ってみると翻訳精度が非常に高いというわけではないが、ある程度内容は理解できるし、同時に録音して後からボイスレコーダーアプリで文字起こしすることで、より精度の高い翻訳も可能になる。

通訳には「リスニングモード」も追加され、外国語による講演などもリアルタイムで翻訳し、内容を把握できるようになった

そしてもう1つ、ビジネスで役立つのがメールの文章生成機能である。これは標準搭載の「Samsungキーボード」で利用でき、要点を入力すると自動でメールの文章を生成してくれるというもの。仕事のメールも素早く記述して送信できる。

実はこれら機能のうち、Samsung Notesに関するもの以外は、Galaxy Z Flipでも利用できる。それゆえ、文章生成機能ではビジネス用のフォーマルな文章だけでなく、チャットやSNSで使用するカジュアルな文章の生成も可能だ。Galaxy Z Flip6でも有効活用できるだろう。

「Samsungキーボード」の生成機能は、簡単なキーワードからフォーマル、カジュアルなどさまざまな文体での文章を作成できる。画像は「今日は風邪で休み。熱がある」といったワードからSNS用のカジュアルな文章を生成したところ

他にも2機種に共通して強化がなされているのが、Galaxy AIを活用した写真編集機能である。そのうち、新たに追加された機能の1つが「AIスケッチ」だ。これはSamsung NotesのAIスケッチとは違って、写真の上に追加したいものを描くことにより、写真の上にリアルなオブジェクトが追加されるというもの。被写体のサイズを写真に合わせて自動的に調整してくれることから、調整などが不要で自然な仕上がりの写真に仕立て上げられる。

写真編集の「AIスケッチ」を利用すると、単に描いた絵からオブジェクトを生成するだけでなく、写真の風景に合わせたサイズにしてくれるのも大きなポイント。写真では犬の絵を描いた結果、写真に合わせたサイズで犬が追加されている

もう1つ追加されているのが、顔写真からさまざまなタッチによるイラストを生成してくれる「ポートレートスタジオ」機能。とりわけGalaxy Z Flip6は背面のカメラが強化され、セルフィーもより綺麗に撮影できるようになっただけに、セルフィーの楽しみ方を広げる意味でも多く活用されそうな機能といえる。

「ポートレートスタジオ」を使うと顔写真を複数のスタイルのイラストに変換してくれるので、セルフィーが好きな人には楽しい機能といえる

まとめると、Galaxy Z Fold6は薄型軽量化によって図られ、片手での操作がしやすくなっただけでなく、Galaxy AIによるSamsung Notesなどの強化によって、従来以上にビジネスで活用しやすくなった。このことから、仕事をもっと効率化したいビジネスマンには非常に適したデバイスとなりそうだ。

一方のGalaxy Z Flip6は、カメラやバッテリーなど基本的な性能の強化が図られたことで、普段使いのスマートフォンとしての使い勝手がより向上した。それだけでなく、やはりGalaxy AIの活用によって、写真やSNSで利用しやすい機能が増加。同機種の主要ターゲットとなる若い女性層にとって、より楽しみやすいスマートフォンになったのではないかと考えられる。

ただ両機種ともに、円安の影響で値段は非常に高くなっている。SIMフリーモデルの場合、Galaxy Z Flip6は15万9,000円から17万7,700円、Galaxy Z Fold6に至っては24万9,800円から30万3,800円と、相当高額であることを忘れてはならないだろう(いずれも税込)。Galaxy AIで新しい価値創出をうまく進めてきた印象のある両機種だが、価格を理由として、実際に手が出せる人が限られてしまいそうなのが、やや気がかりだ。

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