広告業界やCMAの批判を受けて

Google、サードパーティCookie廃止方針を撤回。ユーザー追跡をオプトイン方式に変更か

Image:Tada Images/Shutterstock

Googleは、自社ブラウザChromeでの「サードパーティーCookie」を廃止する方針を撤回すると発表した。英国の競争・市場庁(CMA)や広告業界、プライバシー保護団体など多くの方面から反発があったと示唆している。

サードパーティーCookieとは、複数のウェブサイト間でユーザーを追跡し、各個人に向けたターゲティング広告を配信するための仕組みだ。プライバシー侵害が懸念されることから、当初Googleは2022年中に廃止を予定していたが、2021年6月に2023年後半へと変更。さらに2022年夏には2024年後半に延期し、今年4月時点では2025年初頭から段階的に廃止すると述べていた

なお、アップルは2020年にサードパーティCookieの完全ブロックを宣言している

サードパーティCookieの代わりとしてGoogleが提唱しているのが、個人を特定できない形でターゲティング広告を配信する「プライバシーサンドボックス」という仕組みだ。

当初は新技術FLoC(Federated Learning of Cohorts)が提案されたが、ユーザーを特定できる可能性などを指摘され、2022年1月に開発を中止。それに代えてユーザーの閲覧履歴に基づきつつデータを3週間で破棄する「Topics」を提唱し、基本的にはCMAの合意を得ている。

今回の決定につき、Google Privacy Sandbox副社長のAnthony Chavez氏は、ChromeはサードパーティのCookieを廃止する代わりに、ユーザーが「ウェブ全体に適用される情報に基づいた選択を行えるようにする」と述べている。

これはアップルが2021年のiOS 14.5以降に導入したアプリトラッキング透明性(App Tracking Transparency/ATT)と同様の仕組み、すなわちアプリによる追跡をオプトイン(明確な同意を必須とする)方式になる可能性があるだろう。ATTが導入された直後、大手SNSの収益が10億ドル近く消し飛んだとの報道もあった

Googleの発表を受けて、CMAはChromeが「サードパーティCookieを保持するかどうかをユーザーが選べるようにする、ユーザー選択プロンプトを導入する」と書いている。かたやGoogle側は新たなアプローチを「提案中だ」と述べており、CMAはこの変更につき8月中まで一般ユーザーからの 意見を受け付ける予定である。

プライバシー・サンドボックス技術の展開を阻止すべくCMAに苦情を申し立てた広告業界団体「Movement for an Open Web」は、今回の方針変更につき「オープンウェブを囲い込む計画が失敗したことをグーグルが明確に認めた」との声明を発表している。

ざっとまとめれば、Googleはプライバシー・サンドボックスにより業界標準を主導しようとしているのに対して、広告業界やウェブ開発者はGoogleが今まで以上に優越的な地位を占めることを警戒している図式だ。そこにCMAなどの規制機関が介入することで、ユーザーのプライバシー保護と業界の持続を両立させる落とし所を望みたいところだ。

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