死者を召喚することへ異議を唱える向きも

ロニー・ジェイムズ・ディオの復活ホログラムに妻「本物を見たい」と別の方法模索

Image:Eyellusion

2012年に開催されたコーチェラ・フェスティバル。音楽のお祭りに登場するはずのないアーティストが現れて人々を驚かせ、世界中のニュースで報道される話題になった。それもそのはず、Dr.ドレーとスヌープ・ドッグのステージに現れたアーティストは、1996年に死去した2Pacだったからだ。

もちろん、15年も前に死んだラッパーが突然生きて帰って来るわけはない。これは2Pacの姿をステージ上にホログラム映写し、音楽に合わせて動かすというトリックを用いた実験的なステージだった。

死去したアーティストをホログラムで復活させるアイデアは、その後いくつかのアーティストによって実演(?)されている。

2014年には、2009年に亡くなったマイケル・ジャクソンの未発表曲を収めた新譜『XSCAPE』のなかの楽曲を、ホログラムで再現したマイケルがパフォーマンスし、ほかにもバディ・ホリーとロイ・オービソンのジョイントライブや、フランク・ザッパ、ホイットニー・ヒューストンなど、すでに「ライブ」でのパフォーマンスを見ることができないアーティストたちがステージに立ってきた。

一方、すでにこの世にいないアーティストをホログラムで甦らせてまで”働かせる”ことに反対する人たちもいる。たとえばディオンヌ・ワーウィックは、従姉妹であるホイットニーのホログラムツアーに否定的な見解を示している。

そしてホログラムツアーを2度にわたって開催してきたウェンディ・ディオは、もうホログラムを使うことに魅力を感じていない。

ウェンディは2010年に胃がんでこの世を去ったヘヴィメタル界の大物シンガー、ロニー・ジェイムズ・ディオの妻であり、ディオが残した映像資産を管理している。

ホログラムとなって歌うディオの姿は、彼の死後6年を経た2016年に野外フェスティバルのヴァッケン・オープン・エアーで初めて公開され反響を呼び、その後ディオゆかりのバンドメンバーが集ったDio’s Disciplesをバックバンドに従えるライブツアーへと発展した。

このホログラムツアーは、ディオのキャリア全体から選りすぐりのヴォーカルパフォーマンスを集めて音源を制作し、ライブバンドの演奏に合わせて流す方法が採用された。ホログラム映像は脂ののったキャリア中期のロニーの姿を再現したものになっており、セットリストの半分ほどをホログラムのロニーが歌い、のこりをJudas Priestなどのキャリアで知られるティム”リッパー”オーウェンズと、Lynch Mobのシンガー、オニ・ローガンがステージをサポートする形態を取った。

しかし、ツアーに参加したファンの反応はすべてが良好というわけでもなかった。純粋にステージ上で動き、熱唱し、メロイックサインを掲げるディオの姿に感激する人もたくさんいる一方、ホログラムとして再現されたロニーの表情やステージアクションに違和感を覚える人も多い。

1990年代にDioでギターを弾いていたトレイシー・Gは「ホログラムのロニーは不気味で、操り人形のようだ」と酷評し、2000年代にDioのギタリストとして共に活動したダグ・アルドリッチも「ロニーはおそらく、ホログラムを気に入らないだろう」と述べている。アルドリッチは「私はロニーをよく知っているが、彼はおそらく、ただ安らかに眠らせて欲しいと思っているだろう」と語った。

ロニーの妻ウェンディは、2021年にYouTubeチャンネルHangin’ & Bangin’に出演した際、「ホログラムで再現したロニーが動き、歌う姿を初めて見たときは涙が出た」と述べ、ホログラムツアーを行うことを決めたとしている。しかし最初のロニーはやはりどこか違うと感じたため、一時的にツアーを中断してホログラムの改善を行い、後のツアー第2レグではかなり良くなったと語っている。

しかし、今年7月27日のRockman Power Hourへの登場では「いまはもうホログラムツアーを繰り返したいとは思わない」「ホログラムのかわりに、生バンドの演奏とさまざまな特殊効果を組み合わせたところに(本物の)ロニーの映像が入るよう、ステージを作ることにした」と続けて述べた。

ウェンディはその理由として「本物のロニーの方が良いと思ったから。テクノロジーは日々進化しているけれど、私は本物のロニーを見たいと思った。たとえば、Queenはフレディ・マーキュリーの映像を使って似たようなことをやっている」と語った。

Queenはここ数年、ショウのハイライトとなる部分でフレディの映像を使い、ステージ上のブライアン・メイと触れ合うように見える簡易なトリックを披露している。ブライアンが涙ぐむ仕草を見せるのも毎度のことだが、それだけでもファンは十分に満足しているようだ。

ウェンディは「私たちの作品は、それとは少し違うものになるだろう」と述べ、ディズニーランドのライドアトラクションにあるような…3D効果?や、その他の仕掛けを盛り込んだ物を考えている」とした。なお、ウェンディが作っているという新しいロニーのステージは、ホログラムのロニーこそ起用しないものの、ホログラムの制作を担当したEyellusionが引き続き特殊効果を担当して制作中だという。

近年、リアルな映像で人物を再現する技術はめざましい進歩を見せている。たとえばEpic Gamesが昨年PlayStation 5 / Xbox Series X|S向けに公開した次世代3Dエンジンのデモ『The Matrix Awakens』では、キアヌ・リーブスやキャリー=アン・モスが実物とまったく見分けがつかないレベルのCGで描かれている事が話題にもなった。

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