トランプ氏がホワイトハウスに復帰すればAIの軍事化が加速?

トランプ前大統領の盟友、国防強化のための「AIマンハッタン計画」を起草か

Image:Fabrizio Canneti/Shutterstock

ドナルド・トランプ前大統領の盟友らが、AI開発に対する規制を緩和して軍事技術への活用をめざす「包括的なAI大統領令」を起草したと米Washington Postが報じている。この草案には「Make America First in AI」(AIでのアメリカ・ファースト)という項目があり、もしもトランプ氏がホワイトハウスに復帰した場合、AI政策が劇的に変化する可能性があるという。

同紙が入手した大統領令の草案には、軍事AI能力を向上させるための一連の「マンハッタン計画」の概要が記され、AI開発に対する「不必要で負担の大きい規制」の即時見直しを求めている。昨年10月、高度なAIシステムに対して新たな安全評価を義務付けたバイデン政権の大統領令とは対照的である。

さらに草案ではAIモデルを評価し、外国の脅威からシステムを保護する「業界主導」の機関を設立することも提案しているという。

このアプローチはPalantir、Anduril、Scale AIなど、すでに国防総省とAIプロジェクトで契約している企業に利益をもたらす可能性が高い。これらの企業の幹部はトランプ支持を表明し、共和党と密接な関係があると報じられている。

その一方で、大手保守系シンクタンクのヘリテージ財団は政権移行プラン「プロジェクト2025」の一環として、独自のAI政策も起草している。この計画をトランプ陣営は公式に支持していないが、そこには中国に対してAI技術のアクセスを制限したり、米国内のAI研究開発を強化する提案が含まれているとのこと。

この問題に詳しい情報筋によると、今回の草案作成においては、アメリカ・ファースト政策研究所の元トランプ政権高官が重要な役割を果たしたという。ちなみに同シンクタンクはトランプ氏を全面支援しており、理事長は米プロレス団体元トップで前政権では中小企業局長だったリンダ・マクマホン氏である。

アメリカ・ファースト政策研究所は、この草案は公式見解を示すものではなく、いかなる候補者や選挙運動とも連携していないと述べている。しかし、共和党の2024年公式綱領には「AIイノベーションを妨げ、過激な左翼思想を押し付けるジョー・バイデンの危険な大統領令を廃止する」と書かれており、歩調を合わせているようだ。

この方向性は、シリコンバレーにおける政治的な風向きの変化とも符合している。以前は民主党を支持していたハイテク企業幹部やベンチャーキャピタリストの中にも、現在はトランプ氏を支持している者も少なからずいるのだ。

たとえばVCアンドリーセン・ホロウィッツを率いるマーク・アンドリーセン氏とベン・ホロウィッツ氏は、トランプ氏の選挙戦に多額の寄付を行うと報じられている。また、最近の暗殺未遂事件を受け、イーロン・マスク氏も公然と支持し、親トランプのスーパー政治活動委員会(PAC)に資金援助を約束した

現在、米大統領選挙の情勢はトランプ氏に対して有利に傾いているようだ。次期大統領がトランプ氏になるかバイデン氏になるかで米国、ひいては全世界のAIを取り巻く状況が大きく揺さぶられることになりそうだ

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