従業員数十人も解雇

カスペルスキー、政府による販売停止命令受け米国事業を段階的に縮小・撤退すると発表

Image:IB Photography/Shutterstock

ロシアの大手ITセキュリティ企業であるカスペルスキーは、6月に米国政府から米国内での製品販売を禁止する命令が出されたのを受け、7月20日から米国での事業を段階的に縮小することを明らかにした。カスペルスキーは、米国での事業は「もはや存続不可能」だと述べている。

第一報はジャーナリストのキム・ゼッダー氏が自信のウェブサイトZero Dayで報じた。同サイトによると、カスペルスキーの事業縮小に影響を受ける米国の従業員は「50人未満」だとされている。カスペルスキーの広報担当者も、米国において人員削減を行うことを認めた。

6月、米商務省が同社のソフトウェアがセキュリティリスクになるとして米国消費者への同社のウイルス対策ソフトの販売を「初めて」禁止すると発表し、当時の商務長官ジーナ・ライモンド氏が「ロシアは、カスペルスキーのようなロシア企業を利用して米国人の個人情報を収集し、兵器化能力やそれ以上の意図を持っていることを示した」と述べた。

当時は、カスペルスキーは「米国の国家安全保障を脅かす活動」への関与を否定し、異議を申し立てるとしていた。一方で「現在の業務と関係を維持するために法的に利用可能なあらゆる選択肢を検討する」とも述べていた。

9月29日以降、カスペルスキーは米国の顧客にソフトウェアやセキュリティ更新を提供できなくなるため、ユーザーがインストールしたカスペルスキーのウイルス対策ソフトウェアは最新のセキュリティ状態を保てなくなる。

米財務省外国資産管理局(OFAC)も、6月下旬にカスペルスキー社の上級幹部12名に対し「サイバー領域の完全性を確保し、悪質なサイバー脅威から国民を守る」として、制裁を科すことを発表した。ただし、カスペルスキーのCEOであるユージン・カスペルスキー氏に対してはなにも制裁はなかった。

過去のトランプ政権時にも、米国政府は「ロシア政府のハッカーが諜報機関の請負業者の自宅のコンピューターから米国の機密文書を盗んだ」として、政府全体でカスペルスキー製ソフトウェアの使用を禁止している。当時は政府機関のコンピューターでもカスペルスキーのセキュリティソフトが使われていた。

すでに、米国のカスペルスキーのウェブサイトでは製品を購入できなくなっており「法令を遵守するため、カスペルスキーの製品はあなたの国からは購入できません」と注意書きが表示されるようになっている。

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