廉価モデル登場まで勢いは付きにくそう
Apple Vision Pro、あまり売れていない可能性。年内50万台に届かずか
アップルの空間コンピュータ(MRヘッドセット)Apple Vision Proは、発表から約1年を経て日本でも発売された。米国では2月に先行して発売していたが、最初の四半期で売上が10万台に届かず、今四半期の販売台数は75%も減少したと調査会社IDCが報告している。
さらに年内の販売台数は50万台に達することはなく、2025年に廉価モデル(IDCの試算では約半額)だけが勢いを増すことができると予想している。
全世界で初代モデルが発売されることで、米国での需要の弱さを補う見通しだ。それでも、廉価モデル登場までは売上が大幅に増えない可能性はあるとのことだ。Vision Proは日本・中国・シンガポールで6月28日に発売され、オーストラリア・カナダ・フランス・ドイツ・イギリスでは7月12日(現地時間)に発売予定である。
Vision Proの評判はユーザーによりまちまちだ。たいていは斬新なハードウェアと先進的なテクノロジーに感銘を受けるものの、ジェスチャーによる操作は慣れが必要であり、本体だけで約620gもの重さ(外付けバッテリーパックは約350g)のため長時間の装着が難しい。それ以前に正しい使い方が分かりづらく、返品理由の3割を占めていたとの報告もあった。
IDCの副社長は「Vision Proの成功は、価格に関係なく、最終的には利用できるコンテンツにかかっている」という。「製品を国際市場に拡大するにつれて、ローカルコンテンツも利用できることが極めて重要になる」とも付け加えている。Vision Proでしか楽しめない映像、空間コンピュータの利点を活かしたアプリが決め手になるというわけだ。
とはいえ、最大のネックは米国で3500ドル~、日本で約60万円~もの高価格だろう。アップルも初代モデルの売れ行きを見てハイエンドモデルの第2世代を一時棚上げして、廉価モデルの開発に集中しているとの報道が相次いでいる。
非Proの廉価モデル、通称「Apple Vision」は1500~2400ドル(約24~32万円)を目指しているという。しかし、重要な機能を損なわずにコストを削減することに苦労しており、文字通りの “目玉” 機能であるEyesightディスプレイの削除も検討していると報じられていた。
もう1つの案として報じられたのは、MacやiPhoneと接続して使うことだ。これによりヘッドセット側のプロセッサーを廉価なものに置き換え、負荷を減らして消費電力も削減する狙いだろう。
アップル製ヘッドセットを買う人は、おそらくiPhoneやMacも購入済みの確率が高い。Vision Proのスタンドアローンという利点はなくなるが、「強力な母艦とペアリング前提」としてはApple Watchの例もあり、ユーザーの抵抗も少ないかもしれない。