ガラスの雨が横殴りで吹き荒れる惑星

地球の約65光年先にある、ガラスの雨が降る惑星の大気は「腐ったタマゴの臭い」

Image:Roberto Moler Candanosa / Johns Hopkins University

天文学者らは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を使った観測により、地球から約65光年離れた位置にある太陽系外惑星HD 189733 bの大気が、まるでタマゴが腐ったかのような悪臭を放っていることを発見した。

2005年に発見されたこの惑星は、木星の約1.13倍の大きさがあり。恒星から480万km(地球~太陽間の距離の3%ほど)という非常に近い軌道を、まさに炙られながら周回している。大気はあるものの当然ながら気温は非常に熱く、地表温度927℃もある。これは鉛が溶けるほどの温度だ。

恒星にあまりに近いために、潮汐ロックによってこの惑星の自転は公転周期と同じになっている。つまりハンマー投げに使われるハンマーの砲丸部分のように、常に同じ側を恒星に向け、反対側は常に漆黒の宇宙の方を向いた状態にある。

Image:Roberto Moler Candanosa / Johns Hopkins University

このような場合、惑星の、常に恒星の方を向いている側は、恒星からの光や放射線に晒されてガラスを蒸発させるに十分な熱さになっている。蒸発したガラスは上空で時速8046kmというものすごい勢いの風に乗って、惑星の反対側、常に宇宙の方を向いている側に飛ばされ、そこで凝縮してガラスの雨になるという。

今回の発見では、それほどまでに極端な環境のこの惑星の大気中に、酷い悪臭を放つ硫化水素が見つかった。硫化水素は、地球上の腐敗した有機物や火山から放出される、腐った卵のような臭いのする、有毒で可燃性の無色のガスだ。

「硫黄は、より複雑な分子を作るために不可欠な元素だ。炭素、窒素、酸素、リン酸塩と同様に、惑星がどのように作られ、何でできているのかを完全に理解するため、科学者はもっと研究する必要がある」と、研究チームのリーダーでジョンズ・ホプキンス大学の宇宙物理学者、グァンウェイ・フー氏は述べている。

研究者らはこれまで、木星と天王星の大気にも硫化水素の分子が含まれていることから、遠く離れた巨大ガス惑星でも硫化水素が見つかるのではないかと考えていた。しかし、このガスは星間空間に微量に存在する以外、太陽系外ではほとんど発見されていないと研究者らは声明で述べている。

なお、チームは大気中に硫化水素が含まれているのを発見しただけでなく、惑星全体の硫黄含有量も測定した。さらに、この太陽系外惑星の酸素と炭素の供給源を突き止め、水、二酸化炭素、一酸化炭素も発見した。

研究チームは今後数か月で、より多くの太陽系外惑星における硫黄を追跡し、その化合物のレベルの高さが、恒星のすぐそばの惑星でどのように形成されるかを解明したいとしている。

関連キーワード: