PPIはVision Proの半分程度になりそう

アップル、廉価モデル「Apple Vision」用ディスプレイをサムスンやLGから調達か

Image:Jack Skeensv/Shutterstock.com

アップルの空間コンピュータ「Apple Vision Pro」が、ついに日本でも発売された。国内価格は約60万円~だが、これほどほ高価さは4K OLEDマイクロディスプレイを搭載している事情が大きい。本製品の製造コストは約1542ドルであり、そのうち同パーツは約228ドル×2=456ドル程度と見積もられ、実に4分の1以上を占めているからだ。

この4K OLEDディスプレイはソニーが独占供給しているとみられており、年間の製造能力は90万枚。アップルが製造能力の拡大を求めたものの、拒否されたとの報道もあった。複数のサプライヤーを競い合わせることでのコストダウンが働かず、調達費を下げにくいのだろう。

そんななか、アップルがサムスンディスプレイとLGディスプレイの両社に、マイクロOLEDのRFI(企業が部品の調達を計画する際に、サプライヤーに対して求める技術情報の提示)を送ったと著名リーカーが主張している。

VR関連リーカーのBrad Lynch氏によると、その目的は「Vision Pro製品の出荷を増やし、サプライチェーンを安定させるため」だという。

今回の打診は「1700PPIのWOLED+CFパネル」に関するものであり、エントリーレベルのモデル向けだと述べている。以前から噂のあった、廉価モデルを指しているのだろう。

現行のVision Proに搭載されたディスプレイもWOLED型OLEDoS(ガラス基板ではなく、シリコン基板を使う有機EL)+CF、すなわち白色発光の有機ELにカラーフィルターを組み合わせた方式だ。パネルのサイズは1.42インチ、PPI(1インチ当たりのピクセル数)は3386であり、廉価モデルは「PPIを下げる代わりにディスプレイを大型化、結果として同じユーザー体験」を実現するのかもしれない。

ちなみに、Vision Proの後継モデルはWOLED型OLEDoSからRGB OLEDoSに変更されるとの予想もあった。こちらはRGBサブピクセルが直接に光を発するため、カラーフィルターが不要となり、より明るく鮮明な画面を実現できる。

サムスンは昨年10月にRGB OLEDoSを開発中だと発表し、MetaやアップルなどのVR機器を中心に供給していくと説明していた。おそらくVision Pro後継機を想定していたと思われるが、アップルの棚上げにより宙に浮いてしまったかもしれない。

アップルは以前、マイクロOLEDパネルの調達コストを下げるため、中国の大手ディスプレイメーカーSeeYAやBOEと交渉していると報じられていたが、今回の噂を見る限り、そちらは進展していないようだ。

廉価モデル、通称「Apple Vision」は2025年末、価格は1500ドル~(約24万円)を目指しているといわれる。空間コンピュータのコア体験を維持したまま、半額以下にするために開発陣の苦戦は続きそうだ。

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