音声アシスタントで独走していたはずが
Amazon、“生成AI版Alexa”に月額5~10ドル請求か。赤字続きの事業を転換する「必死の試み」
米Amazonは音声アシスタントサービス「Alexa」の生成AIによる強化版を、近いうちに有料で提供することをほのめかしていた。その具体的な金額は、Amazonプライム会費とは別に月額5~10ドルかかる可能性があると報じられている。
Reutersの情報筋によると、同社はAlexa最新バージョンを8月に投入することを目指し、「必死の試み」の意気込みだという。10年の歴史がありながら赤字続きのサービスをテコ入れしようというわけだ。
この有料版Alexaは、「Alexa」と繰り返し言い続ける必要がなくなるという。短いメールの作成や送信、Uber Eatsでの夕食の注文など、1回のプロンプト(命令の指示)で複数のリクエストをこなせるようになると伝えられている。
さらに、新生Alexaはユーザーから「学習」し、お気に入りのテレビ番組を点けたり、朝の目覚ましが鳴ればコーヒーポットのスイッチを入れるなど、習慣的な「ルーチン」を指示できる機能も提供する可能性があるとのことだ。
今回の報道は、“生成AI強化版Alexa”がAmazonプライムとは別料金になるというCNBCの主張とも符合している。Amazonも「クラウド上のモデルの推論には相当なコストが掛かる」として、追加料金なしには提供できないと示唆していた 。
かといって、無料版のAlexaを完全に廃止するわけでもないようだ。現在の無料版は社内で「Classic Alexa」と呼ばれ、いずれ生成AI搭載版に置き換える。その上で、より複雑なクエリやプロンプトを使いたければ月額5~10ドルを追加で徴収する仕組みを検討しているという。
Amazonといえば、まず「買い物」だろう。この点でも新生AIは強化しており、登山のためにどんな帽子や手袋を買えばいいかといったアドバイスも尋ねられるとのこと。この機能は、今年初めに同社が発表したAI買い物チャットボット「Rufus」(記事執筆時点では米国のみ)に似ていると報じられている。
この報道につき、Amazonは「我々はすでに生成AIを様々なAlexaコンポーネントにを統合しており、世界中の家庭に普及している5億台以上のAlexa対応デバイスに、規模に応じた実装に懸命に取り組んでいる」とコメントしている。
が、Amazonの苦境はまさに、その5億台以上ものAlexaデバイスを利益に繋げられていないことだろう。競合他社をはるかに超えるユーザーの音声データを持ちながら、今のところ生成AIに活かされることなく、GoogleやOpenAIにおくれを取っている。一時は音声アシスタントの首位を独走しているとみられていたが、2022年末には大規模なリストラを打ち出していた。