サムスンもTSMCの3nm技術に依存か

「Pixel 10」向けTensor G5、TSMC製造の3nmチップになる可能性高まる

Image:VDB Photos/Shutterstock

Googleが自社スマートフォンPixelシリーズ用のTensorチップについて、2025年には製造委託先をサムスンからTSMCに切り替える予定であることは、何度も報じられてきた。より具体的には、「Pixel 10」用の「Tensor G5」はTSMC製造ということになる。

そんな初のTSMC製造Tensorチップに、3nmプロセスが採用されると韓国メディアBusiness Koreaが報じている。

2021年のPixel 6シリーズに初のTensorチップを搭載して以来、Googleはサムスンに後継チップ製造を委託してきた。これはGoogleが、サムスンのExynosチップをベースとしているためだ。最新のTensor G3も「Exynos 2300」(投入が見送られた未発表チップ)とコアアーキテクチャが同じだと噂されていた

しかし昨年夏、Pixel 10シリーズ用のTensor G5はフルカスタム(完全自社設計)チップとなる可能性が浮上。それはサムスンの技術に依存しなくなり、製造委託先をTSMCに切り替えられることを意味する。

さらに、今年初めにはGoogleが「自社開発チップ」を台湾KYECに引き渡したとの報道もあった。KYECは台湾で製造するチップのテストサービスを提供する企業で、TSMCの生産に向けて着々と準備が進んでいることがうかがえた。

最新のBusiness Korea記事は、これまでの噂話や報道を裏付けるものだ。現在のTensor G3チップはサムスンの4nmプロセスで製造されており、次期「Pixel 9」シリーズ用の「Tensor G4」もサムスン製になると見られている。

それが2025年後半に、TSMCの3nmプロセスに切り替えられるのは順当である。アップルは2023年のiPhone 15 Pro用A17 Proで同技術を採用、クアルコムとMediaTek両社も次世代チップで採用すると予想されているため、むしろ遅いほどだ。

ほか興味深いのは、サムスンが3nmプロセス技術で苦戦していると報じていることだ。同社は3年前にいち早く3nmでの量産開始を宣言したが、期待を下回るパフォーマンスだという。次期スマホ用チップExynos 2500も「期待外れの歩留まり」とのことだ。

特にサムスンは消費電力と熱制御に注力しているものの、TSMCと比べて10~20%程度低いと伝えられている。モバイルやAIサーバー市場で、電力効率の悪さや発熱の高さは致命的である。

そのため著名アナリストのMing-Chi Kuo氏は、次期「Galaxy S25」シリーズではSnapdragonのみの搭載に戻る可能性があると述べている(S24は一部地域でExynos 2400搭載)。次期「Snapdragon 8 Gen 4」もTSMCの3nm製造になると見られているため、サムスン製スマートフォンもTSMCに全面的に依存することになる。

TSMCが3nmチップ製造をほぼ独占している状態は、ユーザーにとって必ずしも望ましいとは言えない。Snapdragon 8 Gen 4は前世代より25~30%値上げが予想され、その一部はスマホ価格に転嫁されることになる。またTSMCの製造能力も逼迫しているため、さらに値上げの噂もある

健全な競争により市場をバランス良くするためにも、サムスンの健闘を祈りたいところだ。

関連キーワード: