「自分に自信を持てるようになる」

細胞から作った「3Dプリント耳」の移植手術が成功

Image:3DBio Therapeutics

再生医療を研究する企業の3DBio Therapeuticsが、生まれつき耳の形状が完全でない患者に、3Dプリントで形成した耳たぶの移植が成功したと発表した。

患者はメキシコ出身の20歳の女性。生まれつき外耳が小さく不完全な小耳症で、聴力にも影響があったとのこと。医師は女性の不完全な耳から、0.5gの軟骨の組織を採取・培養し、耳のスキャンデータと3Dバイオプリント技術を使用して耳たぶを出力した。

たった0.5gの軟骨の組織から耳たぶができるのか、というのが率直な疑問点だが、採取した組織は軟骨の形成に関わる細胞であり、特別な培養環境に置くことで細胞を増殖させ、必要な量の細胞を作り出すことに成功。プリントのための3Dデータは、健康な側の耳たぶのスキャンデータを鏡面反転して作成した。培養した細胞を専用の3Dバイオプリンターを用いて出力し、プリント処理だけでいえば10分もかからなかったとのことだ。

患者の女性は10代の頃から不完全な耳を気にしはじめ、周囲から見えないよう髪を長く伸ばして隠すようになったという。この移植の成功により女性は他人の目を気にすることなく、自由に髪型を楽しめるようになるはずだ。

女性は手術によって「これで私は自分に自信を持てるようになると思う」と述べた。手術を行った医師も「これは画期的な出来事で、すべてが計画どおりに進めば、この方法は革命的なものになるだろう」とコメントしている。

Image:3DBio Therapeutics

米国では毎年、新生児の1,500人ほどが、片方もしくは両方の耳が未発達の欠損状態で生まれてくるという。通常そのような患者には、肋骨の一部や合成素材から耳たぶを作り出して移植するが、今回の手術の手法では、患者の耳の軟骨成分を使用するため、拒否反応が出る可能性が低いとのことだ。

今年は豚の心臓を重い疾患を持つ患者に移植した例が大きく報じられたほか、肺や血管を3Dプリントする研究も行われている。3DBio Therapeuticsの幹部は、「自社の技術なら鼻や腱板といった体の部品、さらには肝臓や腎臓など複雑な臓器でさえも3Dプリントで移植可能になる可能性がある」とNew York Timesに述べている。

3DBio Therapeuticsは、この技術の臨床試験に11人ほどの患者が含まれていると述べており、試験はまだ進行中だ。そのため今後、予期せぬ拒絶反応や合併症などの例が発生する可能性も、もちろん残されている。それでも今回の成功は、この分野における大きな成果のひとつと言えそうだ。

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