アップルはこれまでもプライバシーを重視してきました

アップルは巨大IT企業で唯一、自社AI訓練の著作権問題がない?

Image:Framesira/Shutterstock.com

2月に行われたアップルの今年最初の決算報告で、ティム・クックCEOは「iOS 18」に触れなかった。その一方で、AIについては2度も言及。同氏は発言の中でアップルがAIに「膨大な時間と労力」を費やしているとし、その詳細は「今年のどこかで」発表されると述べた。その機会はアップルが毎年開催している世界開発者会議、WWDCになるはずだ。

そしてアップルは、生成AIを合法的に訓練する唯一の巨大テクノロジー企業かもしれない。

大規模言語モデル(LLM)を使用した生成AIチャットボットは、OpenAIの「ChatGPT」、マイクロソフトの「Copilot」、Googleの「Gemini」などが次々と話題になっている。だが、その強化学習の過程で著作権のあるコンテンツが無断使用されたと報告され、多数の作家、新聞社などからいくつも訴訟が起こされている。

著作権で保護された作品を全体的に複製したり、そのような作品の重要な部分を生成AIの訓練に使ったりすることは、著作権侵害に該当する。基本的にAIの訓練で著作物を使う行為に「フェアユース」は当てはまらないと考えるのが良いだろう。

こうした生成AIにまつわる騒ぎとは、いまのところ縁がないのがアップルだ。同社は昨年12月に、出版社のコンデナスト、IAC、NBCニュースとコンテンツ使用の交渉を行っていることが報じられていた。これらの交渉が成立したか否かは伝えられていないが、アップルはこの自社製AIを、基本的なオンデバイス機能に限って提供するのに用いると報じられている

そんななか、より複雑なタスクの処理のために、OpenAIもしくはGoogleのAIを使うための契約を結ぼうとしている、とApple Insiderは伝えている。

こうすることで、自社のAIはオンデバイス機能のみであるためプライバシーの保護とともに著作権に関するトラブルが生じない。もし複雑な用途で使用する他社のAIで著作権の問題が生じても、そのAIを供給する側の問題とすることができる。

ちなみにアップルは、マルチモーダル大規模言語モデル「MM1」に関する論文にを3月に発表している。このLLMのトレーニングでは、使用する画像、画像に添付されるテキスト、テキストベースの入力を、慎重に組み合わせて行った。これにより、より優れた画像キャプション、複数段階の推論、プライバシーの保護が同時に可能になったと報告している。

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