“みんゴル”開発元による“究極”VRゴルフに没入!「アルティメット スイング ゴルフ」、Meta Questで発売前に体験した
VR/MRヘッドセットのMeta Quest 3で “世界最小のゴルフ場” を体験できるイベントスペースが、東京・原宿のアパレルストア「Lacoste Harajuku」に4月26日まで期間限定でオープンした。
“みんゴル” の愛称で知られる「みんなのGOLF」を開発した、クラップハンズの最新VRゲーム「アルティメット スイング ゴルフ」が実現する仮想空間内のゴルフエンターテインメントを筆者も先行体験した。クラップハンズのプロモーションディレクターである八木宏之氏が考える、VR/MRゲームの可能性についても聞くことができた。
Meta Quest独占タイトル「アルティメット スイング ゴルフ」が発売
Meta Quest 3は、Metaが2023年10月に発売した、シリーズ最新のVR/MRヘッドセット(価格は税込74,800円から)。PCやスマホとの有線接続が不要なスタンドアロンタイプのヘッドセットだ。
フルカラー表示のビデオパススルーに対応し、本体内蔵のカメラで実世界の映像を取り込みながら、高精細な3Dオブジェクトをミックスして表示する。リアルなMR(複合現実)体験をユーザーはゲームやアプリを通じて楽しめるし、デベロッパもまた新しいコンテンツの可能性を追求できる。
Meta Questには内蔵ストレージがあり、その容量が許す限りストアからアプリやゲームをダウンロードして楽しめる。クアルコムがVR/MRデバイスのために設計した新しいSoCの「Snapdragon XR2 Gen 2」は、VR/MR対応のアプリやゲームのスムーズな動作を実現する。Wi-Fi 6Eに対応する無線通信機能もビルトインしているので、オンライン対戦型のゲームも遊べる。「アルティメット スイング ゴルフ」には最大4人のプレーヤーと一緒にコースを回れるVRオンライン対戦機能が搭載されている。
「アルティメット スイング ゴルフ」はクラップハンズが5月17日からMeta Questシリーズ(Meta Quest 3/2/Pro)に独占提供するタイトルだ。Lacoste Harajukuで開催された「世界最小のゴルフ場 by Meta Quest」のローンチ記者会見に登壇したメタ プラットフォーム Reality Labs日本マーケティング統括のピエール・キャン氏は、 “みんゴル” のゲームスタジオによる最新タイトルとファッションブランドのラコステとチームを組んで「若年層にもVR/MRエンターテインメントの楽しさを広く伝えたい」と奮起した。
ゴルフ経験者から初心者も楽しめる
「アルティメット スイング ゴルフ」は、Meta Questのヘッドセットを装着して、利き手に握るコントローラーをクラブやパターに見立てて、体を動かしながらプレイする。スイングの力強さでショットのパワーが決まり、インパクトの瞬間にクラブのフェイスが向く方向に合わせてボールが軌道を描く。ショットが極めて正確にトレースされるので、プレイヤーにとっては上達しがいのあるスポーツゲームだ。
Lacoste Harajukuで開催された記者会見には、タレントの吉村崇氏と池田美優氏が参加して、アルティメット スイング ゴルフのオンライン対戦を実演してみせた。2人とも仕事の合間のオフタイムには足繁くゴルフコースに通う熱心なゴルファーだ。
特に吉村氏のゴルフ歴は8年以上になるというが、「リアルなショットの手応えや、大自然のゴルフコースに飛び込みながらプレイしているような開放感がとても魅力的」だと本作の出来映えを絶賛した。
筆者も同じ機会に「アルティメット スイング ゴルフ」を体験した。筆者はゴルフをやらないが、任天堂のファミコンの時代から様々なゴルフゲームを遊んできた。
スポーツ系のゲームは身体を動かさず、手に握ったコントローラーで静かにプレイする方が賢明だと筆者は思っていたが、いざ全身をつかって「アルティメット スイング ゴルフ」を遊んでみると、新鮮な体験に深くのめり込んでしまった。コントローラーの反応はとても精度が高い。一方、ホンモノのゴルフのような正しいアドレス、かっこいいテイクバックを決めなくても、最初はゲームならではの小さなモーションで打ってもボールは狙った方向に飛ぶ。
いきなりオンライン対戦する必要はもちろんない。1人でじっくりと練習したい入門プレーヤーのために「トレーニング」モードもある。身体を動かすVRゲームとはいえ、室内に2メートル四方のプレイ空間を見つけることができれば安全に楽しめるだろう。3Dグラフィクスも手が込んでいて美しい。起伏に富んだ多彩なゴルフコースの地形は、いずれも立体CGで描かれたメタバースであることはわかっていながら、大自然の中のゴルフコースに出かけたような開放感が味わえた。扇風機等を使って室内に風を回せばゴルフコースを訪れた気分になれそうだ。
ゴルフはVRゲーム化に適したスポーツ
ローンチ記者会見にゲストとして出席したクラップハンズのプロモーションディレクター、八木宏之氏に「アルティメット スイング ゴルフ」を作り上げた手応えを聞いた。
ヘッドセットを装着してプレイする “没入型ゴルフゲーム” の開発において、今回苦労した点などはあったのだろうか。実のところクラップハンズには本タイトルに先駆けて、2019年にPlayStation VR用のゲームタイトルとして「みんなのGOLF VR」をリリースした経験がある。ゆえに八木氏は「PSVR向けタイトルの開発から得たノウハウを活かし、Unityを使いながらスムーズにつくることができた」と話す。ただ、「みんなのGOLF VR」は1人用タイトルだった。マルチプレーヤーによるVRオンライン対戦は初めての試みになったが、Meta Quest 3の高いハードウェアのパフォーマンスを活かして快適なゲーム体験を提供できるのではないかと期待を寄せる。
八木氏は「ふだんから本格的に “リアルのゴルフ” を楽しむ方にも『アルティメット スイング ゴルフ』を楽しんでもらいたい」と語る。先刻、筆者はコントローラーを軽く振ればボールに当たるし、それなりにプレイが楽しめると試遊感を伝えたが、八木氏に聞くと「ゴルフの基本的なスイングを意識しながら、コントローラーを振ってもらったほうがボールを狙った方向に遠くに飛ばせるようになる」のだというアドバイスをいただいた。筆者も「アルティメット スイング ゴルフ」にもしのめり込んでしまったら、クラブを1本買って近所の打ちっぱなしに通うぐらいまでにはなりそうな気がしている。
ゴルフゲームは全身を激しく動かすことなく楽しめるので「VR/MR化に適したコンテンツ」だと、新しいタイトルの開発を終えて感じた手応えを八木氏が語った。レーシングやシューティング系のゲームに比べると視線移動も少なくて済むので、視覚と身体による感覚のズレが生む “VR酔い” の影響も避けられそうだ。同社のヒット作には「みんなのテニス」もある。八木氏は「アルティメット スイング ゴルフ」の反響も見ながら、今後もスタジオとして様々なスポーツ系VRゲームの可能性を探りたいと語った。
ヘッドセットが出揃い、コンテンツ競争は激しさを増す
アップルは2月から米国で、ヘッドセット型の “空間コンピュータ” として「Apple Vision Pro」を発売した。4月上旬には米国向けに発表したプレスリリースの中で、発売以来Apple Vision Proにエンタープライズ(BtoB)市場から強い引き合いがあり、SAP Analytics CloudやMicrosoft 365、Webex by Cisco、Zoom、Boxなど著名企業によるビジネスソリューションとの連携が急速に拡大していることをアピールしている。
ソニーもまた、今年初に開催されたCESで高精細の4K OLEDマイクロディスプレイとフルカラー表示によるビデオパススルーに対応するXRヘッドマウントディスプレイの試作機を公開し、ドイツのシーメンスと一緒に3Dコンテンツクリエイターを支援するプラットフォームを開発・提供する事業プランを発表した。
リアルとバーチャルを融合した空間を創造する技術自体は特に目新しいものではないが、Meta Quest 3やApple Vision Proに代表されるようなハイグレードなヘッドマウントタイプのデバイスが出揃ってきたことで、これまでのVR/MR空間における体験が飛躍的なアップグレードを遂げそうな機運も高まっている。Meta Quest 3は一般のコンシューマーにも手頃な価格と、画質や操作性などクオリティのバランスが最も良いプロダクトのひとつだ。独自の発展を遂げながら、 “高級機” であるApple Vision Proとはひと味違う用途をこれからも開拓してほしい。