殴る蹴るは歩行ロボット恒例
中国LimX、山地を歩くAIロボットの実証デモを公開。殴る蹴る引っ張るにも耐え抜く
汎用脚型ロボット開発を手がける中国企業のLimX Dynamics(逐際動力)社は、二足歩行ロボット「P1」の最新の実証実験を発表。そこでは人間から殴る蹴るといったこと受けても踏み止まり、複雑な地形を走破できることをアピールしている。
LimX社は、人型ロボットや車輪付き四脚ロボット、人工知能を研究開発する企業だ。2022年に設立されたばかりだが、2023年9月には脚部に車輪を組み合わせ、リアルタイムで地形を検知して階段の上り下りもできる「W1」を発表していた。
そうした製品群のなか、同社のP1は強化学習を使っている。Limxの説明によれば、動く物体や道中の段差といった外部からの刺激に反応するという。
ここでいう強化学習とは、機械学習の一種だ。AIエージェントが未知の環境のもと、繰り返し試行錯誤を重ねることでタスクを実行する。他の機械学習とは異なり、人間が介入したり、プログラムを与える必要はない。
最新のP1実証テストは、中国・深センの塘朗山で行われた。テストの目的は、荒れ地での予測不能な環境でロボットを試すことであり、P1は常に周囲の状況を把握し、強化学習を通じてデータを取り込み行動に反映する必要があった。
実験室や都市と山地との最大の違いは、同じ段差や斜面、あるいは平坦な地面が1つもないことだ。土壌浸食により岩石が露出し、斜面には蔓が絡みつき、風化した地層が砂となって地面を覆う。そこは人間にとっても歩くことが容易くはない環境である。
このテスト中、P1は森林やハイキングに関するデータは一切与えられなかったが、山地を歩くことができた。草に覆われた丘を登ったり、枯れ葉の積もる溝の中でつんのめりつつも持ちこたえたり、見事な健脚ぶりを誇っている。
それだけでも十分な感はあるが、LimXは歩行型ロボット恒例の「殴る蹴る」テストも行っている。わざわざ脚を狙って蹴り、引っ張っては突き放しているが、それでもP1はバランスを回復して倒れない。ついには木の棒で殴られているが、よく見ればロボットの脚に当たって折れており、強度も十分のようだ。
脚部のあるロボット開発を手がける中国企業は、LimXだけではない。数日前にもUnitree社が、人型ロボ「Unitree H1」の映像を公開し、華麗にバク宙を決めている姿を披露していた。日本国内のロボット開発企業にも、健闘を期待したいところだ。