アップルはEpicを「信頼に値しない」と非難

アップル、Epic GamesのiOS開発者アカウントを停止。EU向け独自ゲームストアは頓挫か

Image:DANIEL CONSTANTE/Shutterstock.com

Epic Gamesは6日(現地時間)、アップルが同社のiOS開発者アカウントを停止したため、予定していたiOS向けゲームストアが開発できなくなったと発表した。これはEUのデジタル市場法(DMA)に対する重大な違反であり、アップルがiOSでの真の競争を認めるつもりがない証拠だと主張している。

昨日配信が始まったiOS 17.4では、EU諸国に限って代替アプリストア(App Store以外のサードパーティ製アプリストア)に対応した。これによりEpic側は独自ゲームストアを立ち上げるはずだったが、出鼻を挫かれた格好である。

Epicはブログ記事にて、アップルの弁護士から送られてきた書簡を公開。そこではEpicが「信頼に値しない」と述べており、これまで同社がアップルの規約に従わなかった過去を指摘している。なお、アップルは2020年夏にEpicの開発者アカウントを全て停止し、今年初めに復活させたばかりである。

では、何がきっかけとなったのか。その発端は、アップルがEUの代替アプリストアにつき、莫大な額に上る可能性がある「コア技術料」ほかの新たなビジネス条件を発表したことだろう。

Epiのティム・スウィーニーCEOは、これを「悪質なコンプライアンスの新たな例」と表現。アップルは技術的にはDMAを遵守しながらも、実際は「ダウンロードに対する新たなゴミ手数料や、自社が関わらない支払いに対する新たなアップル税など、違法で反競争的なスキーム」と痛烈に批判していた。

その後、アップル幹部のフィル・シラー氏は2月23日、Epic Gamesに電子メールを送り、同社が約束を守ることを「書面で保証」するよう求めた。ただし、文中で引用しているのはスウィーニー氏による別の投稿である

シラー氏は「わかりやすく、文句のつけようのない言葉で、今回Epicを信用すべき理由を教えてください」として締めくくっている。

これに対しスウィーニー氏は「Epicと子会社は誠実に行動しており、Appleとの現在および将来の契約の全条項を遵守する」と簡潔に回答している。だが、アップルはこの言葉に満足しなかったようで、同社の開発者アカウントを停止したという流れである。

今回の措置につき、Epicは「潜在的な最大の競争相手の1つを排除しようとしている」「アップルと競争しようとしたり、不公正なやり方を批判すればどうなるかを、他の開発者に対して見せしめにしている」と主張。さらに「アップル不公正で違法な行為に対して発言したEpicに対する報復だ」と述べている。

かたやアップルは、米CNBCほか複数のメディアに声明を発表し、Epic側に「契約上の義務に対する甚だしい違反」があったためと主張。

さらに「Epic Gamesの完全所有子会社、関連会社、同社の管理下にあるその他の事業体の一部または全てを、いつでもアップル独自の裁量で終了させる権利を有する」とした上で、「Epicの過去から現在にいたる行いを考慮し、その権利を行使することを選んだ」と述べている。

アップルとEpicとの確執は、2020年にEpicがiOS版『Fortnite』内にアップルへの手数料が発生しない課金方法を実装し、それが規約違反としてアプリがApp Storeから削除されたことまで遡る。

それ以来、Epicは法廷闘争を繰り広げつつ、アップルのApp Store運営を「独占」と呼び、アップルへの抗議を自由への戦いと位置づけている。

今回の動きが、代替アプリストアを計画している他社にどのように影響を及ぼすのか。また、先日アップルに約3000億円の制裁金を科すと発表したばかりのEUがどう反応するのか、注視したいところだ。

関連キーワード: