3DSエミュレーター「Citra」配布も終了

Switchエミュレーター「Yuzu」、約3.6億円の和解金を任天堂に支払いへ

Image:Giaaneka / Shutterstock

先日、任天堂が同社のゲーム機「Nintento Switch」のエミュレーターである「Yuzu」の開発者を提訴したことをお伝えしたが、どうやらYuzu側は全面的に任天堂側の要求を受け入れることにしたようだ。また、この結果は同開発者によるNintendo 3DSエミュレーター「Citra」の配布やサポートも終了することを意味している。

Yuzuの開発者は、ユーザーに宛てたDiscordのメッセージで、自分たちは「著作権侵害には反対してきた」とし、プロジェクトによって「任天堂に損害を与えるつもりはなかった」と主張している。しかし「今では、私たちのプロジェクトが任天堂の技術的保護措置を回避し、ユーザーが認可されたハードウェア以外でゲームをプレイできるため、広範な著作権侵害につながっていることがわかった」と述べた。

そして、直ちにYuzuの「コードリポジトリをオフラインにし、PatreonアカウントとDiscord サーバーを停止、ウェブサイトも間もなく閉鎖する」としている(すでにGitHubにあったYuzuとCitraのソースコードは削除されている)。

このメッセージは3月5日現在、Yuzuのウェブサイトにも掲載されている。Switchの暗号化を回避し、著作権で保護されたゲームをSwitch以外のハードウェアでプレイできるエミュレーターを開発してきた人物が本気で発する言葉とは思えないが、おそらくこのようなメッセージを出すことも和解条件に含まれているのだろう。

Yuzu側が受け入れた和解条件は240万ドルの和解金支払いだけでなく、今後のYuzuの開発からYuzuのプログラム本体やコードの配布、Yuzuの宣伝用ウェブサイトやSNSでの情報発信、そして任天堂の著作権保護を回避する行為全般の永久禁止への同意が含まれている。

さらに、ドメイン名「yuzu-emu.org」の任天堂への引き渡し、Yuzuのプログラムコードを、Yuzuの開発や使用を可能とするために使われるすべての著作権回避ツールとともに破棄し、「物理的な回避用デバイス」や「改造された任天堂のハードウェア」を任天堂へ引き渡すことへの同意、任天堂の知的財産権侵害の「証拠」を保全することなどが条件として提示された。

仮にYuzu側が裁判で争う方針を採っていたならば、このエミュレーターが本当に任天堂の著作権保護を回避しているのかどうかが争点のひとつになっていたかもしれない。Yuzuはエミュレーターとしての動作に必要なBIOS持たず、ユーザーが自分で用意する必要があるからだ。しかし任天堂側はたとえBIOSをユーザーからの持ち込みに頼るにしても、それを使用することでYuzuが著作権保護を回避可能になるのであれば著作権保護を回避していると認定できるとし、裁判所にもそれを求めている。

一部では、YuzuやCitraのようなエミュレーターがなければ、そのハードウェアが製品としてのライフサイクルを終えると入手困難になり、任天堂屋その他の著作権者によるゲームが後の世代で廃れてしまうという意見もあるようだ。しかしそれならば、第三者が許可なく著作権保護を回避するエミュレーターを作るのでなく、著作権者側がその扱いを判断し対応すべきだろう。

なお、YuzuとCitraのソースコードはすでにGitHubでの配布を終了しているが、少なくとも和解が決定されるまでは配布されていた。よってそれをダウンロードした別の開発者が今後、YuzuやCitraを参考にした新たなエミュレーターを開発する可能性はあるかもしれない。だが、もしそれを配布しようと考えるのなら、その先には任天堂の法務チームが待ち構えていることを覚えておく必要がありそうだ。

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