Twitter全体を見渡す“神視点”ツール
Twitter、マスク氏に全データアクセスツール「firehose」を提供へ
テスラ・SpaceX他のCEOで、現在Twitterの買収を進めているイーロン・マスク氏はここ最近、Twitterが公表した「スパム(自動的にツイートを繰り返す)アカウントの割合が5%未満」というTwitter側の主張を疑い、「Twitterが自動化されたアカウントに関する十分なデータを提供していない、正しいデータを提出しなければ買収の取り引きを中止するか、価格を引き下げる」とTwtterに迫っている。
マスク氏はTwitter買収の意向を明らかにした4月当時、「買収が成功すればスパムbotをサービスから駆逐する」と息巻いていた。しかしTwitterがマスク氏に示したbotアカウントの推定割合は、外部の調査で言われていた10~20%よりもかなり低い5%未満というものだったことから、以来マスク氏はTwitterに対して不信感を露わにしている。
またマスク氏の弁護団は2日前、Twitterに対して同社がスパムアカウント数を推定した背景にあるデータの提供を拒否し、合併契約に違反したと主張する書類を米証券取引委員会(SEC)に提出した。
これに対して、Twitterのパラグ・アグラワルCEOは、買収完了のためにマスク氏に対して「協力し、情報を共有し続ける」と述べ、「買収の合意はすべての株主にとって最善の利益だと信じている。われわれは合意した価格と条件で取引を完了し、買収の契約を実施するつもりだ」と以前からの発言を繰り返している。
そして、6月8日にWashington Postが報じた情報によると、なんとTwitter社が毎日5億件ほど投稿されるTwitterのサービス内全ツイートのデータストリームにアクセスするためのツール「firehose」APIを、マスク氏に提供する方針であるという。firehoseをわかりやすく説明すると「Twitterの全ユーザーをフォローしているアカウントのタイムライン」を見ることが可能になるということだ。Twitter全体を見渡す “神視点” ツールと言ってもいいかもしれない。
もちろん、膨大なデータを何の工夫もなしにすべて入手し、解析することは実質的に不可能だ。それでも広告のターゲティングやプラットフォームの監視に役立てることが可能なため、Twitterにとっても、最も重要なリソースといえるだろう。
いくらTwitterの買収を進めているマスク氏とはいえ、まだ部外者である個人に対してこうしたツールを与えるのは、異例なことかもしれない。ただ、マスク氏のTwitter買収の取引においては、その契約条項に「取引の完了に関連する合理的なビジネス目的のために」情報を得る権利があると記されており、Twitterは要求されたデータを提供する必要があるとのことだ。
一方で、このなりふり構わないデータ提供は、実はTwitter側に有利に作用するとの見方もある。一部でささやかれているように、もしマスク氏がスパム・botアカウントの割合に固執する本当の理由が、440億ドルとぶち上げた買収価格を引き下げようとするための工作だとしたら、完全な生データを差し出されたマスク氏側は、今度は自身の主張が正しいことを証明しなければならない。
そしてTwitterが示したbotアカウントの割合が正しければ、Twitterが買収契約に違反したというマスク氏の主張を覆す証拠になる。Twitterにはその自信があるように思える。Washington Postによれば、Twitterは「早ければ今週中にも」マスク氏にデータを提供できるだろうと述べている。
ちなみにTwitterによると、現在20社ほどの企業や組織がしかるべき対価を支払ってfirehose APIを使用しているとのことだ。数年前にはMITの研究者や、GoogleなどもこのAPIを利用していたとThe Vergeは伝えている。
- Source: Washington Post
- via: Ars Technica Engadget The Verge