脳から学習障害や社会的機能の違いを発見可能になるかも

脳スキャン画像から「性別を90%の精度で見分ける」AIの研究

Image:create jobs 51/Shutterstock.com

新しい研究によると、スタンフォード大学の研究者らは、特定の性別がなぜ、どのように行動するのかについて、何らかの根拠がある可能性があることを発見したと報告している。

研究者らは長年、人の性別が脳の組織や機能に与える影響について議論してきたが、これまでは性差を具体的な脳の違いに結びつけるのは難しかった。

精神医学・行動科学教授でスタンフォード認知システム神経科学研究所所長のヴィノッド・メノン博士は「この研究の主な動機は、性別が人間の脳の発達、老化、精神疾患や神経疾患の発現において重要な役割を果たしているということだ」「健康な成人の脳における一貫性のある再現可能な性差を特定することは、精神疾患や神経疾患における性特有の脆弱性をより深く理解するための重要なステップ」になると述べている。

そして、メノン博士ら研究チームは、大規模なデータセットを使って脳のスキャンを分析するAIを高度に強化、男女を見分けるポイントとして脳内の活動がより活発化するホットスポットをいくつか特定した。

ひとつめは、デフォルト・モード・ネットワークと呼ばれるもので、人々が特になにも意識していないときに活発化する。もう一つは脳の線条体や大脳辺縁系といった領域で、これは学習や報酬に対する反応に重要な部分だ。

研究チームは、約1500のMRIスキャン映像でディープニューラルネットワークを鍛えた。そして、研究者がテスト用のスキャン画像を示したところ、このAIは男性と女性の脳の違いに気づき始めたという。

結果、AIは示された脳スキャン画像が男性のものか、または女性のものかを90%以上の精度で見分けることができたと述べている。メノン博士は「これは、性差が人間の脳組織を決定する強固な要因であるという非常に強力な証拠だ」と述べた。

また「健康な成人の脳において一貫した再現可能な性差を同定することは、精神疾患や神経疾患における性差による脆弱性をより深く理解するための重要な一歩」になるとし、「研究者はわれわれのAIモデルを使って、例えば学習障害や社会的機能の違いに関連する脳の違いを見つける」といった幅広い応用ができると述べている。

チームは続いて、認知能力の性別固有のモデルを開発した。片方のAIモデルは女性ではなく男性の認知能力を効果的に予測し、もう片方は男性ではなく女性の認知能力を効果的に予測する。「男女間の脳パターンを分離することに成功したため、これらのモデルは非常にうまく機能した」「このことは、脳の組織における性差を見落とすと、精神神経疾患の根底にある重要な要因を見逃してしまう可能性があることも示している」とメノン博士は述べている。

 研究チームは性別による差を調べるためにAIモデルを利用した、メノン博士によれば、このモデルは、脳のつながりがどのような認知能力や行動にどのように関係しているかを研究することにも使えるとしており、これらのAIモデルをほかの他の研究者にも共有していく予定だ。

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