死者は語る

AIで“銃犯罪による死者の声”を再現、被害者らが銃規制を訴えるキャンペーンが話題に

Image:zef art/Shutterstock.com

米国の銃規制法案を支持する若者たちが主導する団体March for Our LivesとChange the Refが「The Shotline」と称するキャンペーンを共同で開始した。

これは米国の銃規制改革を求める人たちが、専用のウェブサイトから自動ボイスメールを使って議員に対し直接意見を伝えることができるキャンペーンだ。

ボイスメールの音声は、遺族から提供された、銃犯罪によって命を落とした被害者の声をAIに学習させて生成されている。The Shotlineは文字どおり「声なきものの声を聞く」キャンペーンだと言えるだろう。

AIディープフェイクといえば、最近のテイラー・スウィフトの例にあるように、人々にとっては印象の良いものではない。また死者の声や姿をAIで再現することは、人間の人工的な描写を作成し、実質的に所有することとなり、著名な俳優やアーティストなどをAIクローン化することの倫理的影響などが議論されている。

今回のThe Shotlineでは、誰かによって命を奪われた人の声を信じられないほど明瞭に再現し、遺族の願いとともに、よりよい世の中にするよう訴えかけている。もちろん気味の悪さもあるものの、大きな説得力を伴い、人々の代表者に対して強い印象を与えられそうだ。

キャンペーンでは、Change the Refを設立した夫妻の息子で、6年前に高校で銃撃に遭いこの世を去ったホアキン・オリバー氏の声をはじめ、10歳から30歳までの若者たちの声がAIで再現され、ボイスメールとして発信されている。

なお、米国では最近、連邦通信委員会(FCC)によってAI自動音声電話による選挙活動や営業活動が禁止されたところだ。今回のキャンペーンを支援する広告代理店のMullenLoweは、このキャンペーンが電話でなくメールで発信されるものだとして、AIロボコールには該当しないとの考えを主張している。

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