ビデオを解析してドット単位でコースやマシンを再現

幻のサテラビュー用『BS F-ZERO GRAND PRIX』2作を有志が忠実再現

Image:Nintendo/YouTube

過去の任天堂による名作ゲームは次々と復刻されているが、絶対に復活が望めないものがある。スーパーファミコン向け周辺機器「サテラビュー」専用ソフトの『BS F-ZERO GRAND PRIX』および『BS F-ZERO GRAND PRIX 2』である。それぞれ、1996年と1997年に配信された。

サテラビューは衛星データ放送を通じてゲームソフトを配信する仕組みであり、後のダウンロードソフトの先駆けだ。が、データ放送が2000年に終了しているため、システム的に再現が不可能となっている。

今や幻となってしまった『BS F-ZERO GRAND PRIX』2作だが、高い技術力を持つ有志たちが結集して忠実に再現。さらにオリジナルROMのMOD(改造データ)として、Internet Archive上で無料公開している。

この『BS F-ZERO GRAND PRIX』シリーズは、全10コース、4台の新マシン(スーパーファミコンの初代『F-ZERO』と仕様が全く違う)、そしてスーファミ版にはなかったゴースト機能が追加。これらはサウンドリンクゲーム、つまり決められた1時間のみゲーム配信を受けることができ、その時間のみプレイできた。衛星放送がなくなったいま、遊ぶ手段がないわけだ。

しかし、当時リアルタイムでプレイして録画した「kukun kun」なる人物が、2018年に動画をYouTubeに公開。これを手がかりとして、ROMHacker GuyPerfect氏が率いる開発者やアーキビスト(資料の保管・保存を行う)チームがコースを再構築した次第だ。

このプロジェクトは、元々『スーパーマリオブラザーズ』プレイ解析用に作られたツール「Graphite」の修正版を使用。これはゲームプレイ動画から正確なキャラクター位置とボタン入力を抽出するものであり、コースの正確なドット構成を割り出すことに役立った。

さらにスーファミ版『F-ZERO』のアセットを使いつつ、BS版専用のアセットはデータがないためアーティストのPorthor氏とPowerPandaが新たに作り、『BS F-ZERO GRAND PRIX』の全コースを忠実に再現したという。

またオリジナルの『BS F-ZERO GRAND PRIX』2作を収めたメモリーパックにつき、大手掲示板Redditのユーザーu/Porthgeidwad氏は2年前から5000ドルの懸賞金を出して探し求めている

当時はスーファミ実機でプレイできた以上、データがメモリーパックに保存されているのは間違いない。とはいえ、サウンドリンク方式は通常のファイルタイプとは異なり、スーファミ上には表示されず、直接PC等にダンプ(いわゆる吸い出し)するしか存在を確認しようがない。それが、発見や報告を極めて困難にしているのだろう。

今回の件は、著作権的に微妙な問題をはらんでいると思われるが、建設的な方向に発展を望みたいところだ。

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