サードパーティ修理業者にとっては悪夢の設計

Apple Vision ProをiFixitが分解。修理業者には「悪夢」の複雑さ

Image:iFixit

先週末、アップルは空間コンピュータことApple Vision Proを米国にて発売した。消費者向けMRヘッドセットとしては高価格帯に属する3499ドル(約52万円)~であり、前例のないユーザー体験を実現しているだけに、その内側に何が潜んでいるかにも注目が集まっている。

そんな熱気のなか、修理業者iFixitがさっそく「Vision Proを分解してみた」ビデオを公開している。

本製品の分解で簡単なことは、電源コードやバッテリーパック、頭部に固定するSolo Knit Bandを取り外すことぐらいだ。そもそも表面にはネジやはめ込みなど突破口となる箇所がないため、iFixitはヒートガンで温めて接着剤を緩めつつ、工具を差し込んでこじ開けている。

その過程で保護フィルムやガラスパネル等に傷やヒビが入っており、本来の業務である「修理」はいったん脇に置かれている。

興味深いのは、外から着用者の様子が分かるEyesightの分析だろう。単にユーザーの目をそのまま2次元の画像として映しているのではなく、様々な角度から自然に見える3D画像としているのだ。

そのためVision Proはレンチキュラーレンズを使っているという。表面にかまぼこ状の凸レンズが複数並んだシート状で、視点の移動と合わさって拡大される部分が変わり、両眼視差により3Dに見せるというものだ。

Vision Proでは、外側の有機ELパネルの上にレンチキュラー層を搭載している。複数の顔画像をレンダリングし(AとB)、それらをスライスして、ある角度から左目にAを、別の角度から右目にBを表示する。これにより、立体視効果による3Dの顔を作り上げているわけだ。

Image:iFixit

ただし、この方式にはデメリットがある。複数の画像に分割するために、水平解像度が必然的に低下してしまうのだ。さらにレンチキュラー層の前面には別のプラスチックレンズ層があり、Vision Proの幅に合わせて投影面を引き延ばしている。Eyesightの目がぼやけて暗く見えるのは、それが原因のようだ。

さて外側のEyeSight関連レイヤーを取り除いても、Vision Proは問題なく動作する。内側のレンズアセンブリを取り外すのは難しくなく、その下には冷却システムのデュアルファンが姿を現す。が、本番はここからだった。iFixitいわく、アップルは「あまり楽しくない」サプライズを用意していた。

ヘッドセット本体内部にはテープやネジ、ブラケット、小さなコネクターが山ほどあり、Vision Pro専門に訓練を積んだ社内の修理担当者以外が分解を想定していないことはよく分かる。在野の修理業者にとっては、悪夢そのものの設計である。

今回の分解は主にEyesightの分析や内部構造の大まかな把握だけであり、文字通り表面的な考察に留まっている。iFixitも「まだ分析は終わっていない」としており、次回は内部ディスプレイやセンサーアレイを深掘りし、修理しやすさを評価すると予告している。

もしもVision Proを入手できたとしても、iFixitをマネすることは、思いとどまるのが賢明だろう。有料保証サービスAppleCare+(499ドル)に加入していなければ、カバーガラスのひび割れ修理には799ドル、その他の修理には2399ドル(約35万円)かかると見積もられるからだ。

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