Vision ProがiPhone XSより低優先だった時期もあり

Apple Vision Pro試作機が「巨大な箱」だった過去、クックCEOが振り返る

Image:John Gress Media Inc/Shutterstock.com

いよいよアップルの空間コンピュータ「Apple Vision Pro」が、米国では2月2日(現地時間)に発売される。それを祝うように、ティム・クックCEO自らがVision Proを被る写真がエンタメ総合情報誌Vanity Fairのサイトを飾り、本人の口から初期プロトタイプの話などが語られている。

アップル社内では時期尚早との声もあったVision Pro発売につき、クック氏が反対を押し切ったとの噂は以前も報じられていた。だが、自らVision Proを語るのは今回がおそらく初めてのことだ。

クック氏が初めてVision Proを体験したのは、まだ「Vision Pro」とは呼ばれていなかった6、7、あるいは8年前で、現在の社屋Apple Parkが建設される前とのこと。全体的にぼやかした口調で、解像度が低めな話となっているのは、アップルの秘密主義ゆえかもしれない。

それは、まるで「怪物」か「まさに装置」だったとクック氏は語る。「座るように言われ、巨大な怪物のような装置が顔の周りにセットされた。まだ馬鹿でかい箱のように粗末なもので、内側には半ダースの層が重ねられたスクリーンがあり、カメラがひげのように突き出ていた」という。

さらに「当時はまだ装着しているとは言えなかった」「どう考えてもウェアラブルではなかった」とのこと。

クック氏は「顔の両側には大きなファンが動いていて、安定した深いハミングのような音がした。この装置からはワイヤーが出ていて、床一面に張り巡らされ、別の部屋に伸びている。そこでスーパーコンピューターに接続され、ボタンが押され、ライトが点灯し、CPUとGPUが1秒間に何十億というサイクルで脈動を始める!」と振り返る。

それほど巨大なプロトタイプを、どうやればゴーグルの大きさまで縮められるのか。「それがいつかは分からなかったが、ここ(Vision Pro)に到達することは分かっていた」と述べている。

そんな初期プロトタイプで体験できたのは、アポロ11号の乗員であるニール・アームストロング氏とバズ・オルドリン氏と一緒に月面にいることだったという。まさにムーンショット計画(困難だが実現すれば大きなインパクトが期待できるもの)だったのかもしれない。

最初期のVision Pro試作機が巨大で、外部に高度な処理性能を備えたベースステーションを必要としたことは、ニュースメディアThe Informationも伝えていたことだ。それによれば開発は2016年頃に始まり、試作品は複数あったという。その中には重すぎて首に負担がかかるため、小さなクレーンで吊り上げながら着用しなければならないものもあったそうだ。

さらにクック氏はVanity Fairの取材で、アップルにはVision Proの先にも構想や計画があると付け加えている。「我々はロードマップ等で物事を位置づけており、明確な視点を持っている。が、その多くは探求や解明を伴うものだ」「時には点と点が繋がり、思いもよらない場所に導かれることもある」と締めくくっている。

上記のThe Information記事は、かつてVision Pro開発チームがカメラ関連の機能追加をエンジニアリングチームに要望すると「ヘッドセットは優先順位が低い、年末にiPhone XSが出荷されるまで待ってくれ」と言われたとも報じていた。アップル社内でいつ頃からVision Proの優先度が上がったのか、興味深いところだ。

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