見え方の違いが一目瞭然

虫や動物の色覚を再現するビデオカメラ、科学者らが開発

Image:Daniel Hanley

英国サセックス大学と米国ジョージ・メイソン大学ハンリー色彩研究所の研究チームは、自然環境でさまざまな動物が見る色を正確に再現するビデオカメラを作成できると、オープンアクセスジャーナルPLOS Biologyに発表した。

人の目は様々な波長の色を認識できるが、他の動物では目の光受容体の能力が異なるため、それぞれに見え方が違ってくる。

たとえば、ミツバチなどの昆虫や一部の鳥は、人間には見えない紫外線を視覚的に認識できる。このような動物が見る色を、われわれが見える色に再構成すれば、動物が世界をどのように見て、どのようにコミュニケーションし、移動しているかの理解がしやすくなる。

これまでは、光のスペクトルを可視化するためには、マルチスペクトル写真に頼ってきた。マルチスペクトル写真は、通常人間の目に見える写真を超える波長範囲で一連の写真を撮影する必要がある。そのため撮影対象は静止した物でなければならない。映像として記録することは難しかった。

Image:Daniel Hanley

この制限をクリアするために、研究者らは自然光のなかで、移動する物体の動物視点で撮影できるようにするカメラとソフトウェアのシステムを開発した。

このカメラはRGB、つまり赤、緑、青、そしてUV(紫外線)といった、4つのカラーチャネルで動画を同時に記録する。そして「知覚ユニット」によって、対象とする動物の目の光受容体の特性に合わせ、どのように見えるかを動画で再現する。

研究チームは、従来の方法と本システムによる映像をテストし、システムが動物が見る世界の色を92~99%の精度で予測できることを発見した。そして、このカメラシステムが、科学者に新たな研究の道を開くと述べている。

さらに、この新しいシステムは、より優れた自然ドキュメンタリーを作成するための優れたツールにもなるだろう。National Geographic協会は、研究に資金の一部を提供したため、将来の映像作品でこの技術が使用される可能性がある。また研究者らは、エンドユーザーを念頭に置いてソフトウェアを設計し、可能な場合には自動化機能とインタラクティブなプラットフォームを組み込んだとしている。

本システムは3Dプリントで製作したケースに収められた市販のカメラで構築されており、ソフトウェアもオープンソースとして開発し、自由に入手可能だ。

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