スパイダーマンに乗って欲しい

カーボンシャシーを“クモの糸で強化”したスーパーカー「Velozzi Hypercar」

Image:Velozzi

クモの糸は、自然界で最も丈夫で強い素材のひとつと言われている。柔軟性もあるのでカーボンファイバーなら折れてしまうような状況でも壊れず、またチタンなどと比べても安価だ。

Spidey Tekと称する企業のCEOを務めるロベルト・ヴェロッツィ氏と、ユタ州立大学のランディ・ルイス教授は、化学的に合成した蜘蛛の糸「合成スパイダーシルク(synthetic spider silk)」でカーボンファイバーを強化する技術を用いたスーパーカー「Velozzi Hypercar」の開発で協力している。この合成スパイダーシルクは、ユタ州立大学合成バイオマニュファクチャリング施設が開発したものだ。

ヴェロッツィ氏はこれまでに、モータースポーツチーム、NASAジェット推進研究所、スポーツカーメーカーのロータスなどとともに活動してきた経歴をもつ。一方のルイス教授は、合成スパイダーシルク技術を商業化することを目指している。ユタ州立大学は、合成クモの糸の研究で査読済みの論文が科学誌に60件以上掲載されており、50件以上の世界特許を取得しているという。

両者はVelozzi Hypercarのカーボンファイバー製のモノコックシャーシとボディ部分に、クモの糸の成分を組み込むことで、重量を犠牲にすることなく強度と靱性を高めることに成功した。ルイス教授は、クモの糸にある6種類のタンパク質を特定し、遺伝子組み換えしたアルファルファから、その成分を生成することを可能にした。

ヴェロッツィ氏は「炭素繊維複合材料は、クモの糸とブレンドすると本来の強度と剛性を維持しながら、破壊靱性が向上する」と説明。「カーボンファイバーとクモの糸の高性能な性質の相乗効果を利用することで、次世代の高性能、効率的、弾力性のある車両向けの強化された複合材料が生み出される」とコメントしている。

Image:Velozzi

合成クモの糸をシャーシに混合していることを除けば、Velozzi Hypercarは、どことなくフェラーリやロータスに似た雰囲気を持つ高級スポーツカーだ。どうせならルーフのないオープンボディにして、Velozziスパイダーと命名すれば良いのに、と思うがそれは大きなお世話だろう。

また、クモに関連する素材を使っているにもかかわらず、左右のドアは斜め前上方に跳ね上がるバタフライドアを採用している。

Image:Velozzi

この2人乗りハイパーカーは、特注で100台のみが製造される予定だ。11000rpmで1000馬力を発生する高回転型のV12エンジンを搭載し、パドルシフト式の6速マニュアルミッションを装備する。最高速度は370km/hで、0~97km/h加速は2.7秒の瞬発力を誇るという。その他仕様はVelozziのウェブサイトで確認できる。

エクステリアには空力性能を改善するためのアクティブフロントフラップを搭載し、電子的に調整可能なガス油圧ショックと前後車高調整機能、タイヤ空気圧モニタリングシステム、インテリアはレザーまたはアルカンターラを多用し、カーボン製のスポーツバケットシートを備えている。

もし100人のオーナーの1人になりたいのなら、購入資金として300万ドル(約4400万ドル)を支払う準備が必要だ。ヴェロッツィ氏はすでに購入の申し出を開始していると述べているが、このクルマが納入されるのは速くても4~5年後からとのこと。購入を決めた人は、焦らずに待つ心構えが必要だ。

Image:Velozzi

ちなみにヴェロッツィ氏は、2007年にAutomotive X-Prizeコンテストのために電気モーターを動力とするスポーツカーの設計を行っていた。そのデザインは、今回のVelozzi Hypercarと瓜二つである。パワートレインこそ内燃機関に先祖返りしているものの、もし4年後の2028年から本当に量産が開始されるのなら、最初のデザインから20年以上の時を経て、やっと日の目を見ることになるのかもしれない。

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