NASAと協力して着陸再突入経路の更新と評価を継続中

推進剤漏れで月着陸断念の探査機「Peregrine」、月軌道にたどり着く。18日ごろには地球大気圏に再突入へ

Image:Astrobotic

民間初の月面着陸を目指し、1月8日に打ち上げられた米Astroboticの「Peregrine」は、打ち上げ直後に推進剤まわりのトラブルのため、予定していた月面着陸を断念せざるを得ない状況に追い込まれた。

しかし、Astroboticの運用チームは、可能な限り科学的観測やデータ収集といった運用を継続することを決め、少しでも月に近づけるよう努力するとした。

そして1月12日、AstroboticはPeregrineが地球から約38.3万kmの距離、つまり月が地球を周回する軌道がある距離にまで到達したことを明らかにした。ただし、Peregrineのいる場所には月はない。Peregrineの月着陸は、一度月の公転軌道まで到達した後、旋回していったん地球にもどり、次に月軌道に到達するときに着陸するという算段だったからだ。

Image:Astrobotic

しかし、漏れが発生してしまった推進剤は、15日にも枯渇する見込みであり、月着陸を行うことはできない。チームはPeregrineの姿勢を安定的に保ち、すべてのアクティブな機器を使って科学データの収集を続けているが、月着陸船は1月18日ごろに地球の大気圏に落下して燃え尽きることになるという。そのためAstroboticは現在、NASAと協力して着陸再突入経路の更新と評価を継続中だ。

これはNASAや米国政府との協議によって、地球と月周辺のデブリを増やさないようにするための方針でもある。もちろん民間企業による商業宇宙ミッションであるため、最終決定はAstroboticが下すことになるが、Astroboticは「すべての人のため、月~地球空間の未来を守るために、自分たちの役割を果たす」としている。

これまでの間に、チームは200ミリ秒というわずかな時間だけ推進試験を実施、メインエンジンは推進能力を発揮できる可能性があることを示すデータを取得した。ただしトラブルのせいで燃料と推進剤の比率が異常値を示しており、長時間の燃焼を制御を保って行うことは困難だという。それでも、わずかに残る推進剤で太陽光パネルの向きを最適に保つことはできている。

AstroboticのCEOであるジョン・ソーントン氏は「われわれのチームがこのミッションで達成したことをとても誇りに思う。推進異常が発生した後、宇宙船の能力を回復、運用するために多大な課題を克服したミッション管制チームの英雄的な努力を直接目撃できたことは大変光栄なことだった。1月18日にミッションが終了した後、これらの、そしてさらに注目に値するストーリーを共有できることを楽しみにしている。われわれはこのミッションからすでに多くの学びを得ている。そして次の月へのミッションで月への軟着陸を達成するという大きな自信が得られた」とミッションの上方アップデートにコメントを寄せた。

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