『サイバーパンク2077』はデジタル複製ボイスを正式に採用
『プリンス オブ ペルシャ』最新作、キャラの1人がテキスト読み上げ仮音声のまま発売
仏Ubisoftの『プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠』が来週(1月18日)発売されるが、NPCの1人が人間の声優ではなく、音声合成プログラムが声を当てていると報じられている。
米IGNは発売前に製品版をレビューしているが、他のレビュアーに木の精霊キャラクター「Kalux」の声がテキスト読み上げ(TTS)プログラムに酷似していると指摘されたという。無料でオンライン利用できるTTS で同じセリフを処理したところ、本当にソックリだった。
他の声ありキャラクターは人間の声優がクレジットされているなかで、Kaluxにはそのクレジットがない。本作の声優の中には複数のキャラクターを1人で演じている者もいるため、わずかなセリフをTTSに演じさせることは不可解ではある。
まずIGNは、同ゲームのボイス制作を担当したスタジオSide UKにコメントを求めたところ、「TTSを使ったことはない」との趣旨が回答。つまり、TTSへの“配役”はUbisoft側で行ったことになる。
実際にUbisoftは「このキャラクターの英語版の8行のテキストは適切に実装されていなかった」と認めている。そして「今後のパッチで差し替え、更新する予定」とのことだ。
その回答のなかで「なぜ音声合成を使ったのか」を説明するくだりが興味深い。「ゲームの開発過程では、最終的な吹き替えが納品されるまで、音声合成を含む複数のプレースホルダーアセットを使用するチームもある」とのこと。
要は、開発中にはTTSサービスやAIボイスを仮に入れておき、最終的に人間の声優に置き換える。そのうち1人のキャラクターを処理し忘れただけ、というわけだ。「AIがヒトの仕事を奪いに来る」類の話ではないようだ。
しかし、今後はAIを活用したTTS技術がゲームのボイス業界を根本的に変える可能性もなくはない。
たとえば最近、CD Projekt Redは『サイバーパンク2077』のDLCに亡くなった人物の声をAI技術で再現して収録している。また全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)はAI音声技術企業Replica Studiosと協定を締結し、声優がゲームにおける声のデジタル複製の使用を許諾する権利を認めるに至っている。
プレイヤーとしても、馴染みある声がAI合成であれ復活を遂げることは嬉しいはず。が、一方で人気声優の世代交代を妨げる可能性もあり、今後はいっそうの議論が尽くされるのかもしれない。