少しでも長く運用すべくチームは奮闘中

民間企業による月着陸船「Peregrine」、推進剤漏れで月への着陸を断念

Image : Astrobotic

米民間宇宙企業Astroboticの月着陸船「Peregrine」は、1月8日に打ち上げられたUnited Launch Alliance(ULA)のVulcan Centaurロケットに搭載され、月へ向かうために月横断軌道へ展開された。ところが、その直後にPeregrineには異常が発生し、2月23日に予定されていた月面着陸を断念せざるを得なくなった。

初の打ち上げとなったULAのVulcan Centaurは役割どおりペイロードを軌道上でリリースできたものの、Peregrineはシステムに電力を供給する太陽光パネルを太陽の方向に向けることができなかった。

Astroboticはすぐにその原因を突き止めたが、それは推進剤の漏れという致命的な問題であり、推進剤が枯渇した状態では月面への軟着陸も不可能ということはすぐにわかった。

この問題について状況から推定される原因は、推進剤となるヘリウム加圧剤と酸化剤を混合するラインのバルブが密閉されない状態になり、ヘリウムが酸化剤側に必要以上に流入してタンクが破裂したというものだ。またVulcan Centaurロケットから機体がリリースされた際に、何らかの問題が発生したという痕跡はないとのこと。これらに関しては今後、専門家による詳しい調査によって再確認される予定だという。

また、この状況を考慮した結果、Astroboticは収集できる科学的観測やデータ収集を最大限に行うことを優先し、残った推進剤で太陽光発電のための姿勢を維持しつつ、可能な限り月に向かうことを決めた。

記事執筆時点では、Peregrineの推進剤はおそらく1月11~12日のあいだに枯渇すると予想されている。チームは現在も少しでも運用寿命を延ばすべく取り組んでおり、収集できたデータを次回月面着陸ミッション「Griffin」に生かしたい意向だ。

Image:Astborotic

なお、AstroboticはPeregrineからの最新のアップデートでPeregrineのペイロードデッキに搭載されたカメラからの画像が地上に送られてきたと報告している。写真の中央付近には「ルナ ドリームカプセル プロジェクト」と題して世界中の子どもたちから募集したメッセージを収めたポカリスエットの缶デザインのカプセルが見えている。

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