小さくしてゾロメカ化?

モーター1つだけで動く、“足だけ”の二足歩行ロボット「Mugatu」

Image:Carnegie Mellon University

米カーネギーメロン大学の研究者たちは、モーター1つだけを使って歩くことができる二本足ロボット「Mugatu」を開発している。

通常、二本足のロボットを歩行させるには、足の関節ごとにモーターを配置してそれぞれの動きを連携させる必要がある。しかし、研究者らはその常識を覆し、モーター1つだけで歩くロボットを製作した。

このようなロボットは、一般的なヒト型ロボットのように力仕事を与えられたり、人がやっている作業をまるごと肩代わりするような用途ではなく、もっと狭いスペース、たとえば災害現場のがれきの合間を縫って救出に向かったり、大きな機械の内部に入り込んでの点検作業といった用途に向いている。

ただ、そのような場所に向かうロボットは大きな車輪やキャタピラを備えたものが多く、起立状態を保つ必要のある二足歩行ロボットを適用するのは技術的に困難と考えられてきた。

そこで、CMUの機械工学教授であるアーロン・ジョンソンとサラ・バーグブライターが率いるチームは、ロボットの歩き方を可能な限り単純化することを考え、形になったのがこの「Mugatu」と名付けられた足だけの二足歩行ロボットだ。

Mugatuは、2本の足をアクチュエーターひとつで結びつけただけの機構だが、それでも独立して歩き始めることができ、歩行も安定している。さらにまっすぐ歩き続けるだけでなく、必要に応じ左右に方向転換も可能だ。映画『インターステラー』に登場する直方体ロボット「TARS」に少し似ているかもしれない。

動画の動きを見れば、それが坂道を歩いて下りるからくり人形と、よく似た原理で成り立っていることがわかるかもしれない。1930年代のこれらの動力のない木製の人形は、足首などが自由に動くようになっており、左右に揺れて片足が浮き上がるごとに、浮いた方の足が重力で前方に蹴り出されるようになっている。

Mugatuは、下り坂を利用するのでなく腰の部分に備える振動モーターによって下り坂と同じように足を蹴り出す効果を生み出す。まずモーターの力で右脚を前方に振り上げると、全体が右足の重みで前方に傾き、右足が着地して重心が右にかかると、その際に左脚が前方へ動く余地が生まれ、こんどは左足が右足の横を通過して前に降り出される。以下、左右交互に同じことを繰り返すというわけだ。

方向転換は、モーターの力加減を変えて片方の足をもう一方よりも速く、またはより前に踏み出させるようにすることで実現できる。これは下り坂を歩くおもちゃや、他の実験用二足歩行ロボットとMugatuの異なるポイントと言えるかもしれない。

研究者らは現在、冒頭に述べたように災害現場や大型機械の内部点検に対応できるよう、このロボットをさらに縮小しようとしている。

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