資産売却と従業員解雇、知財はドバイの港湾会社へ

次世代交通システム開発のHyperloop One、年内閉鎖へ

Image:Arnold O. A. Pinto / Shutterstock.com

気圧を下げたチューブ内に人を乗せたポッドを走らせる、未来の交通機関を目指したHyperloop Oneが、2023年内にすべての従業員を解雇し、閉鎖することが明らかになった。

Bloombergによると、Hyperloop Oneはすでにオフィスや資産を整理し、従業員の解雇も進めている。そして会社を閉鎖した後は、同社の過半数の株を持つドバイの大手港湾企業DP Worldに移管することになる。

Hyperloop Oneは2014年6月1日に設立され、2017年10月から2022年11月まではVirgin Hyperloopとして活動してきた。オリジナルのHyperloopコンセプトは低圧チューブ内のエアベアリング浮上式ポッドを、リニアモーターで加減速させるしくみで、最高速度は1200km/hを超えると宣伝された。

2016年にはラスベガスの北の砂漠に500mの試験用ループ、通称DevLoopを建設し、翌年にはテスト走行を開始。2020年には400回以上の無人走行試験をこなし、初めて人を乗せての走行も行った。

しかし2022年、Hyperloop Oneは旅客用としての開発計画を断念し、貨物輸送に特化した交通システムの構築に注力する軌道修正を行い、同時に全従業員の半数に相当する100人以上の解雇も実施している。

その間、2017年には共同創業者の1人であるBrogan BamBrogan氏との間で社内でのハラスメント行為などを巡って訴訟沙汰になったり、その翌年に別の共同創業者Shervin Pishevar氏が性的暴行その他違法行為で解雇されるなど、ゴタゴタもあった。

一方、同社を慢性的に苦しめたのは、資金繰りの問題だ。2017年のテスト走行を成功させた後は、英Virgin Group傘下に入ったことで、Richard Branson氏の仲介もあり複数の投資家から資金を得て従業員への給与支払いを継続できた。また2019年には新たにドバイのDP Worldなどから1億7200万ドルを調達したが、最終的にオリジナルコンセプトのような「夢の交通機関」の実現はなかなか見えてこない状況が続いた。

ちなみに、Hyperloop Oneとは別に同じコンセプトを元に実用化を目指した企業としてHyperloop Transportation Technologiesがあるが、こちらは現在世界4か所にテストトラックを含むプロトタイプを設置してHyperloopの開発を続けている。また今年10月には、貨物輸送に特化したHyperloopTT Express Freightのコンセプトアニメーションを公開した。

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