バイオ脳ウェア

培養したヒト脳組織を使ったコンピューター「Brainoware」が開発される

Image:Bruce Rolff/Shutterstock.com

科学者たちは、生きた脳細胞を使用して、さまざまな人々の声を認識できるハイブリッドバイオコンピューター「Brainoware」を開発した。

12月11日付けのNature Electronicsに掲載されたこの技術は、将来的に人工知能(AI)システムに統合されるか、神経科学研究における改良された脳モデルの基礎を形成する可能性があるという。

この研究では、ヒトの組織を模倣した細胞の束である「オルガノイド」が使用されている。オルガノイドは、さまざまな種類の細胞に特化できる幹細胞から作られており、今回は脳に見られるものと同様のニューロンとして形成されている。

この研究のテーマは「AIとオルガノイドの架け橋」を作り、人間の脳が情報を処理できる効率と速度を活用することだとされる。

研究者は「われわれは、脳オルガノイド内の生物学的ニューラルネットワークをコンピューティングに利用できるか、という疑問を投げかけたかった」と述べている。そして最終的には、脳をヒントにした生物学的コンピューターが従来のAIに代わってタスクを実行できるようにすると同時に、人間の脳の研究に関する新しい方法を提供することが期待されるとのことだ。

実験では、研究チームはオルガノイドでできたミニ脳を数千の電極でできたプレートに乗せ、一連の電気パルスとしてデータをオルガノイドに送信、機械学習アルゴリズムを使用してオルガノイドから出てきた内容を「解読」するようにした。

そして、研究者らは8人の会話の録音をこのシステムに理解できる信号に翻訳し供給した。各人の声はオルガノイドによる神経活動の形で異なる反応を返すようになり、これらの応答についてAIをトレーニングした結果、Brainowareは供給された音声の話者を78%の確率で正しく判別できることが確認された。

なお、Brainowareの研究で使用した脳オルガノイドは、聞かされた音声をある程度識別することはできても、発言内容を理解することなどはできない。また、脳細胞が何らかの自我を持つようになるほど高度に脳を再現していないため、倫理的な面でも懸念を引き起こすようなものではないとのことだ。

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