餅が詰まったときに掃除機を使うのも、実は危険です

「食べ物が喉に詰まったらコーラを飲め」は無意味かも。オランダの医療機関で検証

Image:wideonet/Shutterstock.com

欧米ではクリスマスシーズンになると、噛み切れないままの七面鳥やチキンなどを無理に飲み込もうとして、喉に詰まらせたという救急外来の受診が顕著に増加する。これに対し、ウェブサイトなどで紹介されている民間療法的な処置が、喉が詰まった人にはコーラを飲ませれば、その炭酸の作用によって詰まりを取り除けるというものだ。

ところが、アムステルダム大学医療センターの研究者が調べたところでは、喉を詰まらせた人にコーラを飲ませるというのは、実際にはいわゆる迷信に近い話であることがわかったという。

自身も医師がコーラを飲むのを進めている場面に遭遇したことがあるという、研究の筆頭著者Arjan Bredenoord氏は、通常、食べ物が詰まるのは食道の狭窄が原因で、これは以前の炎症による傷跡や、腫瘍による狭窄によるものである可能性があると述べている。さらに場合によっては、飲み込んだ後に食べ物が食道に詰まり、痛みを伴う圧迫感を引き起こしたり、唾液を飲み込むことさえできなくなることもあるとしている。

Bredenoord氏は「これは非常に危険である可能性があるため、人々が正しい治療を受けることが重要になる。だからこそ、これが効果があるかどうかを確認したいと考えた」と研究の動機を語っている。

食べものを喉に詰まらせてしまうことは、俗に「ステーキハウス症候群」と呼ばれることもあるが、専門用語では食塊による「食道閉塞」と呼ばれる。喉に詰まるものとしては、大体がしっかり噛み切れていない肉片で、状況によっては唾液を飲み込むことすらできないほど閉塞してしまうという。

この食道閉塞状態を解消するのにコーラが良いとする説は、少なくとも20年前から庶民の間で広まった。1993年には、コーラが効果的な治療法だと言及する研究論文が発表されている。 ただし、この論文のために被験者となったのはわずか8人だった。

その後2018年には、食道閉塞でERに搬送され、介入(研究目的で人の健康に関する様々な事象に影響を与える要因を制御する行為)としてコーラを飲ませた19人のカルテレビューがあり、ここでも患者の59%に効果があったと報告されている。しかしこの研究の著者は、研究内容にいくつかの制限と解釈バイアスのリスクが存在することを認めている。

なにより、喉に詰まった異物を取り除くのにコーラがどのように作用するのかが正確には不明なままだ。一般的に言われているのは、炭酸が食べ物を分解して取り除きやすくするというものだが、食道を模した器具に鶏肉を詰め込んだところへコーラを流し込む実験では、異物除去効果は見られなかったと2004年の研究では報告されている。また、コーラの炭酸によって食道が膨張し、詰まった食べ物が流れる可能性も考えられるものの、これについての決定的な証拠もまだない。

Bredenoord氏のチームは、2019年から2022年にかけて、オランダの5つの病院の救急外来に運ばれた51人の患者を2つのグループにランダムに分け、一方には一定の間隔でコーラをひとくち投与し、他方は自然に閉塞が解消するのを待つ比較試験を行った(いずれのグループも問題が解決しない場合は内視鏡による検査治療を実施)。

その結果はいずれのグループであっても被験者の61%が閉塞の解消に至った。そのためコーラを飲ませることが状況を改善する効果はなかったと考えられる。それでも、これはまだまだ小規模な研究であるため、コーラを与える量や頻度などで結果が変わる可能性は排除しきれないとのことだ。

ちなみに、日本では毎年、お正月にお餅を喉に詰まらせて緊急搬送されたというニュースが流れるものだが、これも掃除機で吸い出せば良いという話を多くの人が聞いたことがあるだろう。インターネット上でも、そのように書かれているウェブページは割と簡単に発見できる一方、口に掃除機を突っ込んでいきなり吸い出そうとするのは、口内を傷つけたり、最悪肺に損傷を与える可能性があるとの言及も見つかる。何より不衛生だ。

実際のところ、喉に異物を詰まらせた場合に推奨されているのは、まず咳をさせ、できないようなら患者の背中、左右の肩甲骨の中心あたりを繰り返し強くたたく背部叩打法が安全な処置方法だ。またそれでも改善しないならば背後から、患者のへそあたりに両手を回して組み、処置者の手前上方に向けて圧迫するように突き上げる腹部突き上げ法が効果的だ。ただし、この方法は幼児や妊婦には使えない。いずれにせよ、なんらかの処置を行う間に救急を手配するのが最も良い方法だろう。

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